GEヘルスケア・ジャパン(日野市旭が丘4)らは6月13日、青森県東通村で携帯型医療機器を搭載した小型ドクターカーを運行する「ヘルスプロモーションカーモデル実証プロジェクト」を始めると発表した。
今回は同社のほか、青森県、東通村、診療所を中心とした複合施設「東通地域医療センター」(東通村)の4者の共同事業として実施。「走る往診かばん」をコンセプトに小型の超音波画像診断装置や生体情報モニター、心電計、AEDなどの医療機器を搭載した車を開発。「元気ですカー」の愛称で同センターに導入し、往診、巡回診療、健康診断、市民に向けて行う健康教室などの場で活用を図る。
きっかけは昨年の東日本大震災。GE全体で被災地支援に当たる中、「大型の検査機器を持っていっても、現地には入れられる場所がない。小回りが利き、仮設住宅や診療所などで使えるものが欲しいという声が上がった」とプロジェクトに関わる同社マーケティング本部マーケティング企画部マネジャーの加藤さん。これを受け、軽自動車を改造し、小型の検査機器などを搭載したドクターカー「めんこい」を企画。昨秋、社会貢献組織「GEファンデーション」として、岩手・福島・宮城の3県に寄贈した。
今回のプロジェクトでは、「めんこい」で得たノウハウを活用。日本医科大学多摩永山病院(多摩市永山1)の二宮宣文救命救急センター長の監修を受け、救急車が横付けできないような狭い道や坂道でも走れるよう軽四駆自動車をベースに小型のドクターカーを作り上げる予定。「機器を車に乗せて現地に行けば、往診の時でも検査ができるようになる。そうすれば、病気が早く分かって医師も早く対応できるようになるはず」と加藤さん。
東通村では現在、診療所に勤める医師1人と研修医が地域医療を支えるが、診療所へのアクセスの関係から病気が進行してから訪れる人が多いなど課題も抱えているという。このため、今回のプロジェクトでは、「医療従事者側の意識が変わらないといけない」と加藤さん。
現在は秋の実車導入に向け、搭載する検査機器の選定や運用フローなどのシステム作りを進めている段階。診療所と連携することも多い訪問看護師やヘルパー、保健師などさまざまな立場の医療スタッフにも参加を呼び掛け、糖尿病などの疾患を抱えるハイリスクグループへのアプローチや健康増進へ向けた地域住民へのワークショップの開催なども見込む。加藤さんは、「地域の皆さんと車を育てていくような感じ」と意気込む。
東通村は太平洋と津軽海峡に面しており、人口は約7000人。2011年の高齢者人口は29.1パーセントと約3割に上るが、セメント工業や鉱業、東通原子力発電所などの施設も立地することから働き盛りの単身赴任者も多く、「特殊な人口構造だと思う」と加藤さん。