多摩市の複合文化施設・パルテノン多摩（多摩市落合）で11月23日、「日本で最も早い映画賞」として知られる「TAMA映画賞」の授賞式が開催された。

最優秀作品賞を受賞した大林宣彦監督

　毎年11月に行われる映画祭「TAMA CINEMA FORUM（多摩シネマフォーラム）」に合わせて2009年から行っている同賞。今回で4回目。昨年10月～今年9月に公開された作品を対象に映画ファンの立場から表彰し、上映する。

　今年の最優秀作品賞には大林宣彦監督の「この空の花－長岡花火物語」と吉田大八監督の「桐島、部活やめるってよ」の2作品を選出。受賞に際しあいさつに立った大林宣彦監督は「映画をこしらえてきて、いつの間にやら老人と呼ばれる年になってしまった。今日は感慨無量」と喜びを語ったうえで、既に新作の撮影に入ったことに触れ、「『インディーズじいちゃん』はまだまだ元気」と会場を沸かせた。

　「（1年前の今日は）高知で本撮影を前におはらいをした日」と吉田大八監督。「スタッフもキャストもどういう映画になるのか不安でいっぱいだった。こうして観客の皆さんに届いたんだとわかる機会をいただいてありがたい」とあいさつした。口コミから生まれたとされる今回の「桐島現象」については、「映画から引き出された感情の吹き出す勢いが、ここまで凄いとは」と驚きを隠さなかった。

　最優秀男優賞には、今年「わが母の記」などの作品に出演した役所広司さんを選んだ。「こういう賞はめったにもらえるものではない」と役所さん。「これからも新人のつもりで一本一本頑張っていきたい」としたうえで、「若い監督には個性的で素晴らしい方もいる。日本映画も興業的には成功している。その中で、渋めの映画も応援してほしい」と呼びかけた。最優秀女優賞には樹木希林さん、宮﨑あおいさんの2人を選び、宮﨑さんは「作品を作ることに携われるのは幸せなこと。誠実にちゃんといろいろなことと向き合ってがんばっていきたい」とビデオメッセージでコメントを残した。

　最優秀新進男優賞には、「桐島、部活やめるってよ」などに出演した神木隆之介さんと「11.25自決の日　三島由紀夫と若者たち」で映画初出演を果たした満島真之介さんを選出。神木さんは「これからも精進して頑張りたい」としたうえで、「俳優として深みのある人間になりたい」と抱負を述べた。

　満島さんは同作品のメガホンを取り、今年10月に交通事故で急逝した若松孝二監督を思い出しながら、「監督のパワーや若者の力が世界中に広がっていってくれたら」とあいさつ。2009年に最優秀新進女優賞を受賞した姉で女優の満島ひかりさんには、「（受賞を）一番最初に伝えた」という。「姉も一番最初にいただいた賞。家族全員で喜んだ。『いつもありがとうございます』という感じ」と話すと会場の笑いを誘った。

　最優秀新進女優賞は、「苦役列車」に出演した前田敦子さん、「桐島、部活やめるってよ」や「貞子3D」などに出演した橋本愛さんの2人を選出。花束の贈呈の際には、サプライズでサンリオのキャラクター「ハローキティ」が登場した。前田さんは「この映画祭は市民の方々のボランティアで行われていると聞いた。愛のある素敵な映画祭で賞がいただけて嬉しい」とコメント。「見てくださっている方に印象に残る役をやっていきたい」とも。

　初受賞となった橋本さんは、「素直に嬉しい気持ちでいっぱい」とあいさつ。芝居について、「これまで好きではなかった」と述べると、会場からどよめきが起きたが、「この作品に出会えたことで、やっと好きになれた。芝居を愛せるようになった」と作品をきっかけに人生観が変わったことを紹介した。

　当日はこのほかにも、最優秀新進監督賞を受賞した「キツツキと雨」の沖田修一監督や特別賞を受賞した「SR サイタマノラッパー」シリーズの入江悠監督らも登壇。入江監督のあいさつの際には、「SR サイタマノラッパー」の出演者がステージに乱入し、オリジナルラップを披露。観客とコールアンドレスポンスを行うなど盛り上げた。

　「TAMA CINEMA FORUM」は市政20周年記念事業として1991年にスタート。市民が企画・運営の中心を担当し、映画をきっかけとした交流の場として、約1週間にわたる会期中に毎年1万人以上が参加する。今年は今月17日からパルテノン多摩の2つのホールとベルブホール（永山）、ヴィータホール（関戸）の計4カ所を会場に展開。さまざまな映画の上映会や新進監督の作品を上映するコンペティション「TAMA NEW WAVE」、出演者などが参加するトークイベント、お笑い芸人・江頭2：50さんによるネット番組の公開収録イベント「江頭2：50がTAMA映画祭でピーピーピーするぞ！」などが行われた。