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八王子芸妓を描く小説「芸者でGO!」-地元出身の作家・山本幸久さんが出版

八王子を舞台にした小説「芸者でGO!」をまとめた山本幸久さん

八王子を舞台にした小説「芸者でGO!」をまとめた山本幸久さん

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 八王子出身の作家・山本幸久さんが7月10日、八王子芸妓(げいぎ)たちの日常を描いた小説「芸者でGO!」を実業之日本社から刊行した。

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 架空の置き屋「夢民(ゆめたみ)」に在籍する5人の芸妓の姿を描く今作。八王子東急スクエア(八王子市旭町)や「萌え寺」として知られる松栄山了法寺(日吉町)、市内最古の神社として知られる子安神社(明神町4)、八王子プラザホテル(現在のザ・ビー八王子、明神町4)、老舗うなぎ店「志乃ざき」(本町)など実在の飲食店や観光スポットなども数多く登場。多摩地区最大の山車(だし)まつり「八王子まつり」も舞台の一つとなっている。

 1966(昭和41)年生まれの山本さんは、2003年に小説すばる新人賞受賞し、「笑う招き猫」で作家デビュー。その後、「凸凹デイズ」「美晴さんランナウェイ」「ある日、アヒルバス」「床屋さんへちょっと」など数多くの作品を発表している。今作は雑誌連載されていたものを八王子を舞台に変えて加筆修正したもので、八王子だけを舞台とした作品は今回が初めてだという。「ほぼ書き下ろし。書くのは早いのだが、やり直すと決めてから1年くらいかかったので、なんだかんだと2、3年がかりになった」と山本さん。

 物語には、大学受験に失敗し失恋した19歳の「弐二」をはじめに元看護師や元女子プロレスラーなど、さまざまな経歴を持つ女性が登場。芸妓としての話題だけでなく、恋愛模様など年頃の女性としての姿も多く描く。「芸者になりたいと思ってなったというよりは、なぜか知らないうちにこれをやっていたというほうが面白い」と山本さん。「サクセスストーリーにはしたくなかったし、普通の人が芸者をし、恋愛をし、日常を送っているということを書きたかった」。

 八王子を離れて20年ほどたつという山本さん。地元に花街の文化が残っていることを知ったのは、4、5年前。「中央線のポスターに芸者さんが登場したり、テレビで取り上げられたりしたことから知った」。今回、作品をまとめるに当たり、置き屋「ゆき乃恵」(中町)などで取材を進めながら、「八王子の皆さんがどういうところに行ったり、遊んだりしているのか考えながら書いていた」と振り返る。「物語の中で、もう少し遊ばせてあげても良かったかもしれない。高尾山でビールを飲んだり、道の駅に行ったり。でも、芸者さんは意外に忙しかった」と笑う。

 地元の書店では発売後、入り口側のスペースに本が平積みされている状態が続いている。「自分の本が平積みになったことなどないのでドキドキしてしまう」と山本さん。「この本を読んでもらうことで自分の街を好きな人が、ステップアップして街を盛り上げてる人になってくれれば」。八王子の芸妓については、「昔からの伝統もあるし、華やかでアイドルっぽい。せっかくあるものにスポットが当たらず、そのままに放っておくのはもったいないので、ちゃんともり立てて世界発信していったほうがいいのではないか」と提言する。

 新刊本の価格は1,500円(税別)。

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