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八王子でAIを活用したリアルタイムハザードマップ作り 拓大、エイビットら事業参加

握手する石森孝志八王子市長(中央)と川名明夫拓殖大学学長(左)、エイビットの檜山社長(右)

握手する石森孝志八王子市長(中央)と川名明夫拓殖大学学長(左)、エイビットの檜山社長(右)

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 八王子市と通信機器メーカー「エイビット」(八王子市南町)、拓殖大学らは5月16日、河川の水量を常時監視し、AI(人工知能)を活用してリアルタイムにハザードマップを作成する実証事業を進めることを発表した。

八王子市など6者で「八王子市災害対策推進コンソーシアム」を結成

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 台風や短時間豪雨などの影響で川の増水や道路冠水などがたびたび起きている八王子。今回は総務省が進めている「IoTサービス創出支援事業」の一つとして事業を展開。「IoT・AIを活用したリアルタイムハザードマップの作成と行動支援情報の提供モデル実証事業」と名付け、3者のほかビジネスコンサルティングなどを手掛ける、みらい(広島市)、気象情報会社のハレックス(品川区)、エイビットの関係会社で通信サービスの事業化などを手掛けるM2Bコミュニケーションズ(八王子市南町)も参加。6者で「八王子市災害対策推進コンソーシアム」を組み、来年2月まで事業を行う。

 今回は無線を使って情報を送信する水位監視センサーを、市内を流れる河川に約30カ所設置。集めたデータを気象情報とともにサーバーに蓄積し、AIを使って分析することで水害発生の見込みなどをリアルタイムで地図上に示すシステムを作り上げる。発災時の人間の行動についても分析することで、避難施設への適切な誘導など市民が安心して避難ができるシステムの構築も見込む。

 無線局の免許がなくても基地局を展開できる通信技術「LoRaWAN(ローラ・ワン)」を活用。通信速度は遅いものの、1つの基地局で5キロほどの範囲をカバーできるほか、免許を必要としない周波数帯を使うことでコストも安く済むため、次世代の通信技術とされている。今回は事業を進める中で、エイビットとM2Bコミュニケーションズの2社が市内に基地局を整備していく。「今後、見守りなど、それ以外のIoTデバイスにも展開できるよう、ほかの方にも実証実験ができる場を提供したい」とM2Bコミュニケーションズの田中雅人社長。

 拓殖大学では技術協力に加え、学生をプロジェクトに参加させることで学習の場としても活用していく方針。川名明夫学長は「八王子には工学部があり、無線系が強いので協力させていただきたい」とした上で、「現場に出て、現場の人たちと一緒になって解決する人材を育てたいので、地域を学びの場として使わせていただき学生を育てたい。学生を成長させるためにもプロジェクトを成功させたい」と話す。

 「32年前に八王子に引っ越してきて、創業当時から無線都市にしたかった」とプロジェクトの代表提案者でもあるエイビットの檜山竹生社長。通信インフラとして「LoRaWAN」を広めることで、新たなサービスへ向けた土壌づくりも狙う。「皆さんの役に立つ無線通信ネットワークを構築して、いろいろなものに活用していただくことが私の悲願。学生を含めた若い人たちに通信ネットワークをうまく利用してもらって、市民生活、企業生活に役に立てていただければ。八王子にワールドクラスのネットワークを構築するきっかけを頂戴したことを誇りに思っている」とも。

 石森孝志八王子市長は「八王子は世界に誇る企業が集積しており、全国有数の学園都市でもある。1級河川が16もあるなど川は市内をくまなく流れており、異常気象などもあって、どうなるかはなかなか予想がつけられないのが現状。(今回の実証実験を通して)より正確な情報がわれわれの手元に届くようになり、災害が発生したときには迅速な対応ができるようになることに期待したい」と意気込む。

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