三菱電機(千代田区)は1月27日、社内の基金を活用して八王子市内の児童養護施設「エス・オー・エス こどもの村」(裏高尾町)に太陽光発電システムを寄贈した。
社会福祉分野を対象にマッチングギフト制度「SOCIO-ROOTS基金」を運用する同社。個人や部門、グループなど社員から広く寄付を受け付け、寄付額と同額を同社が負担することで、寄付者の善意を倍にするシステムとなっている。基金は同社が米国で1991年から展開する慈善活動「三菱電機米国財団」を取り入れる形で1992年から実施。「施設の運営費など消えてしまう形ではなく、その施設が欲しいと思っているものをあげるというのがコンセプト」と社会貢献推進課社会貢献担当課長の多和田さん。
年間で1,000人余りの社員が参加し約100件ほどの寄付を実施。これまでの寄付件数は約1,300件、寄付額は累計で約5億5,000万円に上る。テレビや冷蔵庫、ベーカリー、エアコンなどの家電からパソコン、自動車など自社の製品の枠にとらわれずさまざまなものを各施設に寄贈してきた。「時代の変化に合わせて、希望されるものは変わってきている」と多和田さん。八王子周辺ではこれまでに知的障害者更生施設に「就労技能研修用機器」として業務用掃除機を寄贈したほか、障害を持つ人ともに活動する劇団に楽器や衣装などを寄贈した経験があるという。
今回は昨年6月に同社の太陽光発電システム事業部など関連部門が販路拡大などを理由に会社から表彰を受けたのがきっかけ。表彰を受けた各部門間で調整を図り、表彰金50万円を寄付に回した。「何か形になるものができればと考えたときに寄付をすることを思いついた」と同部太陽光発電システム事業推進部長の野村さん。過去に同制度を活用して寄付を行った経験も生かした。
寄付先は東京都共同募金会と連絡を取り合いながら選定。「昨年夏頃から動き始め、現地調査なども行って半年くらいかけて決めた」と社会貢献推進課の平岡さん。今回は同施設から太陽光発電システム導入の希望があったことから決めた。「環境への意識をお子さんたちにも身につけてほしいという思いがあり、その点に賛同したところが大きい」(多和田さん)とも。
寄付金と同社基金を合わせた100万円を活用し、同社の住宅用太陽光発電システム「ダイヤモンドソーラー」を導入。工事が子どもたちに影響しないようにと学校の授業時間中などを狙って12月中旬から工事を始め、12月24日に作業は完了。発電量185ワットの太陽電池パネル18枚を屋根に敷き詰め、パワーコンディショナーなど各設備も設置した。年間の発電量は一般家庭で使用される電力の約6割程度をまかなえる毎時3,500キロワット。「耐用年数は一般的には20年以上。発電したうち使わない電気は売電できる」と野村さん。今回のシステム導入により、年間で12万円ほど電気料金の負担が減る見込み。
同基金のほか、2007年からは行政などからの協力も得て全国で「里山保全プロジェクト」も展開する同社。社会貢献推進課課長の阿二さんは「どちらも地道に継続していくことが大事」と話す。