東京ゆりかご幼稚園(八王子市七国3)が8月29日、キッズデザイン協議会主催の「第10回キッズデザイン賞」で最優秀賞である内閣総理大臣賞を受賞した。
2014年春にこれまで園舎を構えていた八王子市館町から八王子みなみ野駅が最寄りとなる七国に移転した同園。100メートルの縁側を備える1階平屋建ての園舎と、40ヘクタールの自然林に囲まれた園庭を持ち、園庭には小川や棚田などを作ることで子どもたちが動植物と触れ合いながら成長できるよう工夫されている。
今回はユネスコが提唱し、世界的に推し進められている「持続可能な開発のための教育(ESD)」を踏まえ、「活動内容、地域と地理、建築のすべてが高次元で融合した、懐かしくも新しい教育のあり方は、 キッズデザインの理念を示すにふさわしい」として最優秀賞が進呈された。
今回の受賞を受け、「思いがけずという気持ち。最初はデザインの賞をいただいてしまって良いのかと思った」と園長で東京内野学園の内野彰裕理事長。「理想を具現化した園舎と八王子の豊かな自然があったこと、これまで幼稚園で培ってきた教育への思いが合わさって受賞できたのだと思う」と話す。
園舎の老朽化や団地の再編計画などに加え、園児の7~8割が七国地区から通っていたこともあり、自然と日常的に関わりの持てるような環境への移転を決意。荒れ地だった場所を子どもたちが遊べるよう山作りをしながら、園舎を作っていったという。
自然を感じられることに加え、「いざというときにすぐ外に出られる環境にしようということで平屋建てにした」と内野さん。建物には多摩産材を用い「地域の材を使うことで、子どもはもちろんだが、親にもそれが子どもにとっていいことだということをメッセージとして発信したかった」と話す。
昨年、全国学校・園庭ビオトープコンクールでは国土交通大臣賞を受賞するなどこれまでも里山を生かした教育は評価されてきたが、「里山は人が管理しないと荒れてしまう。保護者の皆さんにも草刈りや芝生張り、植樹など、さまざまなことにご協力いただいている。これからも幼稚園の活動に関わっていただけるようにしていきたい」と内野さん。
「まだこの広い環境を使いこなせていない。自分たちが知らない植物や生きものがいっぱいいるので、子どもたちと発見しながら、子どもたちの興味・関心を深めていければ。『里山教育』として掲げているようなところまではまだ半分。教育の質をどこまで高められるか、子どもたちのために環境をよくしていけるかを進めていきたい」と意気込む。
「キッズデザイン賞」は、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・研究活動などを顕彰する制度。今回は503点の応募に対し、297点が2次審査を通過し受賞。さらに最優秀賞をはじめとした優秀作品が34点選ばれた。