木工家具の製作チーム「フルスイング」が4月から、八王子市川町に拠点を移して活動している。
主にデザインを担当している佐藤界さんと、製作を担当する大野雄二さんの2人が2003年に結成した同チーム。住宅や店舗、オフィスなどのオーダー家具の設計・製作、空間デザインのほか、スツールやテーブル、ペンスタンド、カードケース、バターナイフといったオリジナルの日用品も数多く手掛けている。
建築現場の現場監督や設計などを手掛けていた佐藤さんが、インテリアへの興味から大野さんを誘い結成したという同チームではこれまで、日の出町にあった、もともと木工所だった場所を借りて活動をしていた。「生まれ育った場所も八王子だし、そのうち多摩と23区の垣根がなくなればいいと思ってやってきた」と佐藤さん。
2010年には、色のついた再生紙を合板で挟み込んだ「ペーパーウッド」がグッドデザイン賞に選ばれた。ドリルデザイン(目黒区)とともに合板の新たな可能性を追求するため立ち上げたプロジェクト「合板研究所」から生まれたもので、合板の断面をデザインの要素として浮かび上がらせたことが高く評価された。
素材そのものをプロデュースする「合板研究所」について、佐藤さんは「月に1回、お互いが挟みたいものを持ってきて、プレス機で加工して検証している。ペーパーウッドもその中から生まれたもので、建築家から一般の方まで使える素材として世の中に発信できた」と振り返る。
「現場監督をやっていたので、いろいろな職種の仕事を見られたことは生きていると思う」とも。設計、デザインと製作の両方をできることを強みとしており、「自分たちがどういうことができるかということを物を作って仕事に生かしている」と話す。
八王子に拠点を移したのは「たまたま」と佐藤さん。今後については、「小さなスペースで商売ができる時代になったので、そういうところの内装を含めた空間を自分たちの商品を含めてやってみたい。オーダー家具はいまだに敷居が高く、既製品の家具と比べられてしまうところもあるが、その垣根を広げてもっと身近なものにしたい。そもそもどこに頼んでいいのかが分からなかったりすると思うので、相談にのれる家具屋でありたい」と意気込む。