八王子をホームとする新たな社会人サッカーチーム「FC NossA(ノッサ) 八王子」が2月1日、立ち上がった。
地元の不動産業者「エスエストラスト」(八王子市横山町)の杉本浩司社長が代表を務める新会社「八王子Jリーグプロジェクト」が手掛ける同チーム。
チームの監督には、土屋征夫さんが就任。土屋さんはブラジルのECノロエスチやインテルナシオナル、国内ではヴェルディ川崎、ヴィッセル神戸、柏レイソル、大宮アルディージャ、東京ヴェルディなどさまざまなチームで選手として活躍し、2018(平成30)年には、Jリーグ功労選手賞も受賞している。チームのアドバイザーには、八王子出身でヴェルディ川崎、横浜FC、東京ヴェルディ、町田ゼルビア、ヴァンフォーレ甲府などで選手としてプレーするなど、さまざまな経験を持つ平本一樹さんが就任した。
チーム名の「nossa」は、ポルトガル語で「僕らの」という意味のほか、感嘆の表現として使われており、チームの設立趣意書でも、その理念として「『ぼくらの八王子』を盛り上げ、市民から愛されるJリーグクラブを本気で目指す」とうたう。今シーズンは東京都社会人サッカーリーグ4部に参戦する方針。将来的には地域リーグ、JFL、Jリーグ入りを目指すだけでなく、実現すれば都内初となるサッカー専用のスタジアムの建設なども視野に入れる。
ブラジルでのサッカー留学の経験を持ち、ブラジルフットボールバー「NossA」(八王子市三崎町)も手掛けるなどサッカーとの関わりが深い杉本さん。八王子に都社会人サッカーリーグ1部で活動しているチームが2チームあることから、これらのチームの統合を目指して奔走(ほんそう)していたが、実現には至らなかった。そこで、今回、新たなチームを自ら立ち上げることにしたという。
「組織を作れば発言力も出てくるし、会社とすることで地位も上がる。八王子の人々をどんどん巻き込んでいって、八王子のチームというカラーを付けたい。八王子を盛り上げることが目的で、Jリーグ入りはその手段。強くなるだけじゃだめで、地域との歩み寄りが必要」と杉本さん。「21年2月1日という数字の並びもあるし、Jリーグは2月1日スタートの会社が多い。Jリーグ入りが目標なので合わせようと思った」とも。
アドバイザーを務める平本さんは、監督を務める土屋さんについて「日本で一番過小評価されているサッカー選手。実績も人間性も素晴らしい。八王子でやる中で監督としてきてくれたら、チームのことも大事にしてくれるだろうし、市のことも考えてくれると思って、僕の中では会社を作るなら、杉本さんがトップで監督をやるなら土屋さんという考えしかなかった」と話す。
杉本さん、平本さんをそれぞれ10代の頃から知っているという土屋さんは「長い付き合いの中、八王子に初めて来て、(杉本さんの)仲間にあった時にすごく良い雰囲気で楽しさを感じた。みんなわいわいしながらやっているし、八王子の人は本当に八王子が好きなんだなとも思った。サッカー人生の中では楽しさを選んできた人間なので、自分にも合っているし、地域が盛り上がったらいいなと思った」と監督を引き受けた事情を明かす。
「社会人でもやらせてもらったことがあるので、絶対に簡単なものではないことは身に染みて感じている。苦しい段階を経ていかなければならないと思うが、その過程の中で街がにぎわって、その中にサッカーがあるという感じになってほしい」と土屋さん。平本さんも「サッカーチームを利用してもらって、街を活性化させたいというところがある。『応援して』ではなく、『応援したいね』と思ってもらえるチームを作っていきたい」と話す。「まずは八王子の全ての人に僕らのチームや活動をわかってもらえるようにするのが最初の目標。ぜひ子どもたちを巻き込んでいきたい。見ているだけではなくて、近くで感じてもらえるような身近なクラブにしていきたい」とも。
今月20日から選手のセレクションを始めるなどチーム作りも本格化する。「まだ何もないので、まずは組織を作らないといけない。みんな本業がある中でのスタート。ちゃんとした組織を作り、選手とグラウンドをどう確保するかなど土台を作っていく年になると思う」と杉本さん。
「社会に出たことがないから皆さんには尊敬しかない」という土屋さん。「自分もそうやってきたところがあるので、チームのため、人のために戦ってくれる選手を集めてチーム作りをしていきたいし、それができれば楽しさが出てくると思う。難しいとは思うけれど、目指すものは一つだけ。時間をかけて、いろんな人と話しながらしっかりと土台を作っていきたい」と意気込む。