八王子の山車(だし)をテーマにした冊子「山車 DASHI」が現在、甲州街道(国道20号)沿いの商店街「八幡上町商店街くらま会」各店で配布されている。
これまで年に1回のペースで八王子の歴史をまとめた冊子を制作し、期間限定で買い物客に配布してきた同会。今回は八王子と山車、祭りの関係についてまとめた。配布は2月17日に始めた。
文政年間に創建され、明治・大正・昭和・平成の各時代に改修されたという同会の山車の彫刻を特集した。八王子の各町が所有する山車も紹介。曳山(ひきやま)美術や社寺建築などを研究し、山車や八王子まつりへの造詣(ぞうけい)も深い八王子市文化財保護審議会の相原悦男会長、高尾山薬王院など八王子の社寺建築に携わってきた宮大工「小町家」の6代目で建築家の小町和義さんのインタビュー記事なども掲載した。
プロジェクトに携わる写真店「桃屋美術」(八王子市八幡町)の春日晃さんは「相原さんはよく店に来られる方で、話を聞いていて面白いと思った。冊子を作る際、テーマを決めるため会の役員と共に相原さんから話を聞いた。町でも山車は所有しているが、構造など知らないことばかりで聞いていて面白かった。八王子まつりに向けて、山車を特集するのは面白いんじゃないかとなった」と話す。
彫刻の特集では、春日さんが山車の各所を新たに撮影するなど力を入れた。「写真にすることによって客観的にクローズアップして見ることができる。資料として残っていったらうれしい。こういう写真はもっと撮っておかないといけないとも思った」と春日さん。
客からの反響は上々で、近隣の学校に配布したところ教材として使いたいと申し出があったという。春日さんは「山車のパレードを見ていても一つ一つの山車に注目することはあまりない。この冊子をきっかけに山車に注目しても面白いのでは。地元や山車、祭りに愛着を持っていただけたら」と話す。
冊子の編さんや装丁などを手がけたプロダクトデザイナーの戸田光祐さんは「市民の方々が気楽に見られるようなものを作りたいと思った。豊富な彫刻の写真に注目してほしい」と話す。「ここまで山車の彫刻にクローズアップして紹介したものはないのでは。資料として価値のある一冊になった」とも。
相原さんは「これだけビジュアルに訴えかけ、今まで見逃していたような彫刻に焦点を当て、網羅的に山車を紹介したものは初めてでは。八王子の山車は各町会が彫刻を競いあって作った歴史がある。それをふまえて八幡上町の山車彫刻のすばらしさを前面に出したものになったと思う」と評価する。
冊子は同商店会の対象店で買い物をした客に無料で進呈している。A5サイズ。108ページ。限定5000部。3月16日まで。