首都大学東京(日野キャンパス=日野市旭ケ丘)の学生による拡張現実(AR)を活用したiPhone・iPad向けアプリが8月末から、iTunes Storeで順次リリースされている。
アプリは3、4年生向けの科目「ネットワーク演習実習」の課題として開発されたもの。講義を担当する同大システムデザイン学部の渡邉英徳准教授が携わった「ヒロシマ・アーカイブARアプリ」をプラットフォームとして用意。これを土台に位置情報とARを用いて東京の姿を表現する「オルタナ東京」をテーマに、iTunes Storeでの配信を目指して、7月上旬から3人1組のグループを作って取り組んできた。
今回はカメラをかざすことで、さまざまな情報を見ることができるAR機能を盛り込んだ3本のアプリをリリース。「SEKIGAHARA AR 第一幕 布陣・対峙(たいじ)」は、戦国時代の「関ヶ原の戦い」を再現するアプリで、開発に当たった山田さんは、「戦いをARで表現したかった」と話す。武将が残した言葉を現代語に置き換え、有名武将がツイッターで発言しているように見せるなど工夫も凝らした。「反響があれば次のシリーズにも取り組みたい」とも。
「ガクメシ」は、都内にある大学の学食を紹介するアプリ。学食巡りをしているブログの手も借り情報をまとめたほか、現在地から5キロ以内にある学食を表示する機能を持たせるなど、「情報をいかにまとめるかを大事にした」と開発に当たった野澤さん。時間が間に合わず、全ての大学の情報を取り込めなかったことに加え、「起動画面やアイコンをもっとよくしたい」と課題も残すが、「こういうアプリがあったら使ってみたいと思っていたもの。学食をきっかけに近くにある大学を知ってもらえれば」と利用を呼びかける。
「きもちの停留所」は、八王子市内のバス停の位置と著名人の名言を組み合わせたアプリ。「いろいろあった時にツイッターで良いつぶやきを見かけて癒やされた」(開発に当たった細田さん)と実用性とエンターテインメントを両立させたアプリを思いついたという。「仕事や日常に疲れた人に見てほしい。『人生、頑張ったらうまくいく』という言葉を集めた」。日頃はイラストレーターとしても活動していることから、ボタンやARモードでの停留所の表現などデザインにも注力。開発中は、「彼らが一番青春していた」と渡邊准教授が振り返るほどメンバー間でやりあったが、「楽しくやれた」と細田さん。
アプリはそれぞれ、1日に数十件ダウンロードされるなど好調。今回の経験を通して、「社会的責任など世に出てから気付いたものもあると思う」と渡邊准教授。「技術は時代に合わせて変わっていくもの。学生たちにはiPhoneアプリの技術者になってほしいわけではない」としたうえで、「(開発に対する考え方や取り組み方など)根底にあるものを学んでもらえたら」と話す。
各アプリはiOS 5.1以降に対応。無料。