東京工科大学メディア学部(八王子市片倉町)は現在、漫才によるコミュニケーションにスポットを当てた「漫才研究プロジェクト」を進めている。
漫才をテーマにした研究は2007年4月から進めており、2人の会話が観客への情報伝達の手段になっているという点に注目して、これまでに「漫才師の視線の向きと体の向き」「漫才が立ち話で進められることの重要性」などについて分析。漫才師は、視線は相方に、体は観客へと向ける傾向があることなどを明らかにしてきた。
「漫才が『見せる・聞かせるコミュニケーション』という構造を持っていることに注目した」と同大学片柳研究所の大庭真人さん。「対話型の教示コンテンツの作成に生かせるのでは―とプロジェクトを立ち上げることになった」。
昨年4月からは同大学メディア学部の飯田仁教授を中心に、「笑いがもたらす情報・情動・同調に着目した漫才インタラクションの時空間的分析」と題した研究を進めており、3月19日には2007年に「M-1グランプリ」でチャンピオンに輝いた漫才コンビ・サンドウィッチマンを招いて「公開収録」も行った。
公開収録ではホームページを使って一般から観客を募集。サンドウィッチマンの2人が同じ内容の漫才やコントを2回に分けて披露し、それぞれのデータを記録。「収録データから2人が見せる立ち居振る舞いや発する声の高さ、大きさなどに加え、掛け合いのテンポや間(ま)などを分析する」と大庭さん。観客がいるケースといないケースでの違いや、漫才とコントでどのように演じ分けているかといったことも調べるという。観客についても笑い声や拍手などを記録し、どのような態度を取っていたのかを分析していく。
「漫才は観客や視聴者に対して情報や感情の要素をうまく伝えることで笑いを生じさせる仕組み」と大庭さん。「この仕組みは2人のキャラクターエージェントが対話しながらユーザーや視聴者に効果的に情報を伝えるというコンテンツ制作のモデルにつながる」。今後は漫才に限らず、同様の形を取るニュース番組や通販番組などについても研究していくという。