トヨタ東京自動車大学校(八王子市館町)の学生たちの手によって電気自動車化されたスポーツカーが1月16日、「東京国際カスタムカーコンテスト2011」のECOカー部門で優秀賞を獲得した。
同校は1954(昭和29)年に設立されたトヨタ自動車系列の専門学校。自動車整備士やメカニックなどを養成している。同コンテストは幕張メッセ(千葉市美浜区)で1月14日~16日に開催されたドレスアップした車を集めるモーターショー「東京オートサロン」の会場で行われたもの。ECOカー部門には40台がエントリーした。
同校がイベントに参加するのは昨年に続き2回目。「学生に活動を通じてもっと車を好きになってもらえれば」と同校副校長の松浪さん。昨年はトヨタが1965(昭和40)年から1969(昭和44)年にかけて製造した小型スポーツカー「トヨタ・スポーツ800(ヨタハチ)」を電気自動車化し発表。同校教員でプロジェクトにかかわる森さんは「オールドカーのファンからも、電気自動車に興味ある人からも予想以上の良い反響をもらった」と話す。
昨年発表した「1号車」は1人乗り・1モーター・鉛電池という仕様。「ナンバーを取ることが目標だったので、今回はやりたいことをやってみようと思った」と森さん。今回も同じ「ヨタハチ」をベースとしたが、2人乗り・ツインモーター・リチウムイオンバッテリーとさまざまなアイデアを詰め込んだ。レストアは授業を通して行い、内部の設計などは同校の自動車研究部に参加する学生10人ほどが担当。ボディーのデザインは学内で公募を行うなど学校ぐるみで1台の車を作り上げた。
こだわったのは水平対向ツインモーター。学生が設計に携わったが、「この部分だけで半年くらいはかかったと思う」と森さん。でき上がった設計図は地元・八王子の機械加工業者に製造を依頼したが、「複雑すぎていつできるかわからないと言われた」。このほか、1号車では普通の塗料を使用していたところを水性塗料に変えるなど環境問題にも意識を払った。
「最初のころは何をすれば良いのかわからなかった」とは2年生で同部メンバーの竹本さん。「誰が部長というのも決まっていないので、自然に作業を分担した感じ」。今回は自主研究を兼ねてウインカーやストップランプをLED化するなどさまざまな作業に取り組んだ。「先輩たちの手助けを得ながら進めた。今後は研究の方面に進みたいので、とても意義ある時間だった」
作り上げた車は「TOYOTA SPORTS EV-TWIN」と命名。1回の充電で100キロの走行が可能で最高出力が50キロワット、最高時速が160キロ以上とパワーのある車になった。イベント中はパンフレットなども用意し、学生自らが現場で説明に当たった。「トヨタの豊田章男社長にも乗っていただいた。『かっこいい』と声をかけてもらえた」。優秀賞の受賞について松浪さんは「とても喜ばしいこと。結果は学生にフィードバックできるし、外部の皆さんにも知っていただくきっかけになったのでは」と話す。
同校は2011年度から「ハイブリッド・EV科」を新設。これまで課外活動として行っていた車の製作を授業に取り込むことを決めている。既にスポーツカー「トヨタ・2000GT」をベースとした新モデルのアイデアを検討。「内装はフルオリジナルにしたいし、ボンネットを開けても2000GTの良さが生かせるようなものにしたい」と森さん。「このような活動を通して、わくわくドキドキしてくれる人が増えてくれれば」とも。