八王子市内を通る甲州街道(国道20号)沿いの商店街「八幡上町商店街くらま会」が現在、江戸時代に八王子の街づくりに取り組んだことで知られる大久保長安(ながやす)を題材にしたチラシの制作を進めている。
武田信玄、徳川家康に重用され、徳川幕府時代には勘定奉行、老中を務めた大久保長安。家康から八王子のまちづくりを任され、旧武田家家臣を中心とした「八王子千人同心」の統括にも当たるなど八王子との関わりが深い。市内には屋敷跡「大久保石見守長安陣屋跡」(小門町)も残されており、同所は市による「八王子八十八景」の一つにもなっている。
同商店街はこの陣屋跡から数分の場所に位置しており、大久保長安が1613年に没してから今年で400年を迎えたことと、商店街の活性化を目指してチラシを企画。「商店街の若手が活発に活動する中で生まれたもの」と話すのは、企画に携わり商店街で洋品店「イツミヤ」(八幡町)とジュエリーリフォーム店「ポッパナ」(同)を営む中野さん。「メディアとしてチラシを使うことで商店街も発信力を持てる。そうすることで、人が集まり、新たなコミュニティーもつくれるのでは」とも。
シニア層をメーンターゲットに据え、市内で大久保長安の研究を進めている「大久保長安の会」や、八王子駅南口のアトリエ・カモミール(万町)を拠点に活動するアーティスト・Yamamoto Harucaさんらが制作に協力。紙面はイラストをふんだんに使うなど工夫を凝らし、「歴史に興味のない方にもボールが届くよう、ビジュアル中心で分かりやすくしている」と中野さん。今秋発行の第1弾では大久保長安の人となりを紹介。3万5000部を制作し、新聞折り込みの形で配布したところ、「次の日からチラシを持って店を訪れてくれる人もいた。うれしかった」。第2弾も大久保長安の顔を描いた一般公募のイラストを掲載するなど読者参加企画を行い、こちらも評判となった。
現在は年末にも発行予定の第3弾を制作中。今回は長安に加え、江戸中期から後期にかけて活躍した俳人・榎本星布(せいふ)や武田信玄の五女・松姫など八王子にゆかりのある人物を取り上げる。榎本星布については詠んだ歌を現代訳にして掲載。「とても面白い人なので、その魅力が伝われば」と中野さん。松姫についても、「戦国時代版ロミオとジュリエットのような話なので注目してもらえれば」。チラシを持って商店街を人が行き交うようになるのが狙いで、「地域のコミュニティーをつくり直すことができれば、そこから商売がまた始まるのでは」と期待を込める。