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八王子の企業が実験的に「5Gガラケー」作る 連続通話時間は6分

開発した「5Gガラケー」(左)と、1月に発表した自営PHS端末の厚さの違いを示す小林さん

開発した「5Gガラケー」(左)と、1月に発表した自営PHS端末の厚さの違いを示す小林さん

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 八王子の通信機器メーカー「エイビット」(八王子市南町)の檜山竹生社長が社内で実験的に作ったという「5Gガラケー」を自身のSNSで紹介した。

エイビットの5G向け端末と並ぶ「5Gガラケー」と自営PHS端末

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 通信用計測器や、PHS、5G関連製品などを手掛ける同社。清涼菓子「フリスク」サイズの超小型PHS端末「ストラップフォン」や卓上型PHS端末「イエデンワ」、ハート型PHS端末「Heart 401AB」など変わり種の端末を開発・販売していたことから、「変態端末メーカー」と呼ばれることもある。

 1月26日にフェイスブックに投稿された「5Gガラケー」。檜山さんは「コロナ疲れでネタ出しです。変態端末は健在です」(原文ママ)と写真付きで紹介した。デザインは1月に新製品として発表した自営PHS端末の筐体(きょうたい)をベースとしているが、厚みは倍以上になり、本体を冷やす必要があることから、スリットやファンも取り付けた。電源として外部バッテリーも必須で、「連続通話時間 PHS端末は6時間、5Gガラケーは6分」とする。

 「5Gガラケー」を開発したのは、実用化実験のころからPHSに携わり、「PHSラブ」を自称する同社開発部の小林充生部長ら社内の有志だという。「PHSは1月に公衆サービスが終わったが、構内ではまだまだ元気。音声を安定的に届けるには、PHSに勝るものはまだない」と小林さん。

 1月に新製品を発表したのも、「世の中ではメーカーが止めてしまったために、『PHSはいいけど、物が作れないし部品も買えない』となっている。落としても踏まれても動いている『働く電話』はまだ必要。エイビットは自社でチップを開発しているし、まだいけるということを見せようと思って、メッセージ性のある新製品を作った」と明かす。

 そんな中、実験的に「5Gガラケー」を作った。「2020年1月の書き初めで『変態端末を作る』と書いた。そこからこのプロジェクトの意義などを社内でプレゼンし春先に企画を立ち上げた」と小林さん。「変態エイビット、ここにあり」とも。檜山社長は「誰も作らないし誰も商品化しない。それが面白い。(作るのは)当たり前だと思った」とほほ笑む。

 開発は5人ほどで進めたという。「当社には5Gの基本技術はあるので、『ちょっと変態端末を作ってみよう』と有志で進めた」と小林さん。「実証実験という意味で、ガラケーの投影面積に収まる『ソフトウエアラジオ』を作りたかった。ソフトウエアでローカル5Gのプロトコルを動かしている。プロトコルさえ入れられれば、PHSでもLTEでもなんにでも化けるハードウエアができた」と自信を見せる。

 「ソフトウエアで動くローカル5Gの機能を、このサイズに収めたのは頑張ったところ。弊社はソフトウエアラジオが得意なので、いろいろな無線機を作ってみたい」と小林さん。

 檜山社長はこの「5Gガラケー」について、「部品が高いので、売ったら1000万円くらいになってしまう」と明かす。「ただ、ここまでくれば時間とお金をかければ、どうにでもなってしまう。もしビジネスチャンスがあるんだったら、追加投資をして、次の世界に持っていければ」と話す。

 「普通の会社だと、PHSをやっていた人たちはもうリタイアの年。物は作れない。ただ、うちの会社には現役でそういう人たちがいっぱいいる。それがこういうものを作ることができる力」と檜山社長。「人として技術者として変態がいて、会社としても変態性がないとできない。変態を35年続けるのは結構大変。僕らみたいな中堅どころは、ものづくり感覚のある若い人たちに投資することもできる。そういう発信もできたら」と意欲を見せる。

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