工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に拠点を置く「ソーラーチーム」が10月27日、オーストラリア大陸を縦断するソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」のゴール地点であるアデレードに到着し、クラス8位でレースを終えた。
ゴール後、「Koga」を担ぎ上げて車検に向かう「ソーラーチーム」
「BWSC」はオーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの約3000キロを走破する世界最大のソーラーカーレース。4年ぶりに開催された今回、同チームは「チャレンジャークラス」に出場した。
新型ソーラーカー「Koga(コーガ)」で戦いに挑んだ同チーム。8月中旬に日本から船便で送ったソーラーカーなどの荷物が、港の混雑などで大会直前になっても荷受けできない事態になるなど、スタート前からトラブルに見舞われた。
レースは現地時間の今月22日7時に始まった。国内勢トップでダーウィンを出発したが、大会初日から太陽光パネルによる発電にトラブルが発生。発電量が予定の半分以下となり、バッテリーも空になる状態での走行を余儀なくされた。1日のレース終了後、部品の交換など毎日、メンテナンスを行ったが改善することはなく、大会期間中はトラブルを抱えたままの苦しいレースとなった。
今月25日に6番目のコントロールストップである「エルデュンダ」の街を通過するまでは、クラス8位、国内勢としては「東海大学ソーラーカーチーム」に続く2番手を維持した。しかし、その後は発電量の少なさが響き、ペースダウンしたことで後続チームが追い越しを図り、約2720キロ地点にある最後のコントロールストップ「ポートオーガスタ」は9位通過となった。
現地時間の今月27日14時にアデレードに到着した。最終順位はクラス8位だった。国内勢としては、前日にゴールした東海大に次ぐ2番手で終えた。優勝は26日10時にゴールした、ベルギーの「Innoptus Solar Team」だった。
レースを終え、チームリーダーで工学部機械システム工学科3年の中川立土さんは「やっとアデレードのフィニッシュラインを見ることができて、やり遂げた感じがするし、大きく成長できたイベントになった。いろいろと思うことはあるが、これがレースだし自分たちの実力。そこは真摯(しんし)に受け止める。その中でもやれるべきことをチーム一丸となってやり切ることができた。それに関して文句はない」と話す。
日本にソーラーカーが帰ってくるのは来年になるというが、「今回のトラブルから逃げるわけにはいかないので、しっかりと原因を突き止めて、この車体を元気な状態で走れるようにしたい」とも。自身の今後については、「このような経験を積むことができたので、環境問題を考えながら、いろいろなことができるエンジニアになりたい」と中川さん。
車体のキャノピーを設計し、オーストラリアではコントロールポイントや偵察などを担当した同科3年の四宮穂香さんは「初めてだったが、なんとか完走できてよかった。先行偵察ならではの仕事もコントロールポイントでの仕事もちゃんとできてよかった。キャノピーの開閉の機構が不十分などやりたいことができなかったので、次があるなら完璧に設計して、それを成し遂げたい」と話す。
偵察に加え、メディア対応にも当たった同科3年の正山博基さんは「完走できてほっとしたのと、もうちょっと結果が出せたかなという悔しさがある。2025年の大会にも行きたいと考えている。今度こそは上位争いをしたい」と意気込む。
監督で同大機械システム工学科の濱根洋人教授は、ゴール時に発電トラブルに際して、ほかのチームから協力が得られたことに感謝を述べた。4年ぶり、5回目の参戦となった今大会を終え、「変わった車になったが、走行は安定し最後は時速100キロで巡航できた。タイヤを替えることはなかったので、足回りも良かったのでは。こういった新しい工夫に学生が取り組み披露したので、いろいろなチームから注目を集めた。こんな風にちょっと変わった技術に取り組んで、またやれたら」と話す。
今回のチームについて「コロナの後だったので、全員がゼロからのスタートになった。逆に言うと知らないからできたところはあるんじゃないか。先輩からのアドバイスが途切れ、過去のことが分かっていないからこそ新しくできたと思う。ここから新しい歴史が作れたら」と濱根さん。