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日野市で初のデマンド交通実証実験 京王電鉄バス、日野交通と連携

協定書を掲げる大坪冬彦日野市長(中央)ら

協定書を掲げる大坪冬彦日野市長(中央)ら

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 日野市が8月1日、市内北東地域でのデマンド交通実証実験実施に当たり、京王電鉄バス(府中市)、日野交通(日野市新町1)と協定を結んだ。

3者が協定書に署名、捺印した

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 日野駅をはじめ、日野市市民の森ふれあいホール(日野本町6)、市民の森スポーツ公園(日野本町7)などの公共施設がある日野市の北東地域は、昨年4月に京王電鉄バスが運転手不足などを理由に同地域を通る日野駅と立川駅北口間の路線バスを大幅に減便した。

 同年5月にバスを利用していた住民ら1560人が市のミニバスで運行を代替するよう要望書を市に提出。しかし、市は12月に代替は困難と判断した。今年4月には市民組織「立66廃止地域に地域協働型交通導入を進める会」が発足し、市と検討を始めた。

 今回、予約システムの開発などを京王電鉄バス、運行事業を日野交通がになう形で、2025年1月ごろから同地域でデマンド交通の実証実験を始めることにした。日野市がデマンド交通に取り組むのは初。事業期間は2026年12月まで。

 車いすが載せられる小型車両1台を用意し、祝日を除く平日9時から17時の間、運行区域に設ける約60カ所のポイントで乗り降りできるようにする。定員は4人程度。乗降ポイントと利用する時間を電話や専用アプリ、LINEで事前に申し込む。料金は1回300円程度を見込む。

 当日、日野市役所で協定の締結式を行い、大坪冬彦日野市長、京王電鉄バスの宮坂周治社長、日野交通の一ノ瀬一雄副社長が協定書に調印した。

 大坪市長は「デマンド交通は地元の市民から成る地域組織との間で実現に向けた対応を積み重ねてきた新たな地域型協働交通。実現を通じて交通不便地域の解消を図ると共に、より効率的で利便性の高い協働型の地域公共交通を目指していきたい。地域のニーズに合わせて柔軟性が高い運行ができることが特徴なので、より多くの方が快適でスムーズに移動できる環境も目指したい」と話す。

 8月の市広報では「公共交通を積極的に利用し守り育てていきましょう」の言葉と共に、バス運転手の集合写真を表紙に掲載した。「今ある公共交通を大事にして、市民には利用してもらいたい。ただ、それにも限界があるので、今回のデマンド交通の実証実験がある」と大坪市長。

 「日野市は坂が多く、狭い道もあるので交通空白地域が多い。38年前に京王バスの力を借りて、いち早くミニバスを走らせ始めた。市民からはミニバスを増やしてほしいといった要望はたくさんあるが、2024年問題もあり、その状況を維持するのも難しくなってきた。人口が減るということは乗降客は増えないし運転手も減るということ。今回は北東地域だが、それ以外の地域でも同じようなことは起こり得る。それを補うのがデマンド交通だと思う。条件に合わせて、さまざまな公共交通のあり方を考え、研究し導入しなければならない」とも。

 宮坂社長は「少子高齢化や生産年齢人口の減少に伴い人手不足が深刻。賃金をはじめとした職員の処遇改善などさまざまな施策を行っているが、必要な運転手数を充足できていないし、在宅勤務など新たな社会の様式が定着したこともあって、路線バスの客数はコロナ前の85%の状態。これまでと同様の規模の地域交通を維持していくことが難しい中で一部の路線の縮小などを行った。既存交通の代替としてのデマンド交通は地域協働型交通として可能性が大きく期待できる。日野交通と力を合わせて、安全で安心な輸送サービスの提供に努めたい」と話す。

 一ノ瀬副社長は「当社が設立して70年がたつ。地域交通を担ってきた会社として、このような話が来たことを大きな事業の転換期と捉え参加することにした。新しい事業を展開するということで、トラブルがないよう対応していきたい。地元を愛するタクシー会社を目指しているので、地域密着をさらに進めて、この事業に取り組んでいきたい」と話す。

 デマンド交通は、運行区域内で乗り降りする場所を自由に選べる乗り合い交通のこと。時刻表に従って決まったルートを走るバスと自由に移動できるタクシーの中間的な存在として位置付けられている。多摩地域では武蔵村山市、東久留米市、あきる野市、三鷹市、調布市などで実証実験が行われている。

 市では実証実験開始を前に道路運送法に基づき意見募集を行っている。意見は都市計画課交通政策係が郵送、メールや電話で受け付ける。締め切りは9月2日。

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