
工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に活動拠点を置く「ソーラーチーム」が6月6日、「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」への参戦を発表した。
「BWSC」はオーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの約3000キロを走破する世界最大のソーラーカーレース。2023年の前回大会までは、10月中旬~下旬に行われていたが、今回は時期を早め、8月24日~31日の日程で行う。
同チームは2013(平成25)年の初参戦以来、2015(平成27)年・2017(平成29)年・2019(平成31)年・2023年の各大会に出場。前回大会では8位でレースを終えた。現在、約100人が所属する同チームとして、6回目の参戦となる今回は最も早いソーラーカーを決める「チャレンジャークラス」に参戦する。
車体の設計から製作まで全てを学生が主体となって行う同チーム。前回大会に使った「Koga(コーガ)」まで、これまで6台のソーラーカーを製作したが、今回は大会の新たな規定に合わせて設計・開発した7台目となる車両「CYGNUS(シグナス)」でレースに挑む。
はくちょう座を意味する「シグナス」と名付けた今回の車両は、これまでの車両では外部の専門業者などに依頼していた工程も学内で行うなど、チームとして初めてほぼ全ての製作を学内設備で賄ったという。
8月のオーストラリアは冬にあたり、日照時間の短さなどから発電量が減少するため、今大会ではソーラーパネルの最大搭載面積の拡大や車両サイズの上限緩和など規定が変更された。
これを受け同チームは、これまでの車両よりも車体の幅を大きく広げ、太陽電池パネルを多く搭載できるよう設計したほか、車体の構造も前回の「Koga」で採用したモノハル(単胴)型から、2つのボディーを並列に並べたカタマラン(双胴)型に変えた。軽量化とメンテナンス性を両立し、バッテリーや電装部品を左側に集約することで重量バランスを調整するなど操縦の安定性も高めた。
車体を担当した工学部機械工学科3年の井上隼輔さんは「前回の反省を生かし、トラブルに強く軽いソーラーカーを目指した。空力、重量、剛性など、総合的に見てバランスの良い車体となった。オーストラリアの過酷な環境においても、チームメンバーとパフォーマンスを発揮できると確信している」と話す。
チームを率いる同大機械システム工学科の濱根洋人教授は「『Designed by 工学院大学、Made at 工学院大学』その言葉を体現するかのように、今回は実製作の多くを学内で完結させたのはチームとして初の試み。企業に頼らず学生たちの力だけで仕上げたシグナスは、これまでで最も学生主体と言える車両。経験と技術を受け継ぎ、学びながら成長する彼らの姿こそ、プロジェクトの意義そのもの。山あり谷ありの連続だったが、今思えばそれほどつらくはなかったように感じる。オーストラリアの地をこのソーラーカーが走る姿を楽しみにしていてほしい」と話す。