八王子の大型家具店「村内ファニチャーアクセス 八王子本店」(八王子市左入町、TEL.042-691-1211)は現在、東京造形大学(宇津貫町)と連携して「家具開発プロジェクト」に取り組んでいる。
同店は「家具は村内、八王子」のキャッチフレーズで知られる家具・インテリアの小売店。1969(昭和44)年に日本初の郊外型ショッピングセンター「村内ホームセンター」(現在の同店八王子本店)を開いたことでも知られ、現在は八王子を中心に東京、神奈川などで店舗を展開する。
同社は2007年に市内の家具店のほか、家具デザイナーや製造業者などで構成する自主組織「家具のまち 八王子」に参加するなど地元八王子と密着した活動も行っており、2009年には同大学で室内建築を専門とする地主教授とともに「家具開発プロジェクト」を立ち上げた。
前回は同大大学院に在学する学生9人が参加しプロジェクトを展開。授業の一環として同社が客から引き受けた不要家具のリ・デザインを行い、その成果を同店などで発表した。「学生たちは真剣に考えてやってくれた。私たちもいい刺激を受けた」とプロジェクトに関わる同社担当者。
今回のテーマは「婚礼家具」。「昔、婚礼時のタンスや鏡台などの家具は『花嫁道具』として親族の思いがこもった大切なものだった」と担当者。「最近は部屋に置く場所がなかったり、部屋に最初から収納があったりすることも多く、その意味は薄れてきている。そこで、そんな結婚の時の思いをデザインの面から何かできないかと考えた」
今回参加したのは同大大学院に通う7人。家具だけでなく、絵画を専攻する学生や中国などからの留学生も参加。日本におけるタンスの歴史や婚礼などについて約半年にわたって勉強会を開いた後、昨年9月から実際のデザインに入った。「日本人の学生にとっても自分たちの文化を再確認できたと思う」と担当者。
1月27日には同社役員などを前に、出来上がったデザインの発表会を開催。担当者は「発表の前はみんな緊張した様子だった」と振り返る。「妻の笑顔を守り隊」をコンセプトに挑んだ同大学大学院デザイン研究専攻領域の鎌田さんは家事の苦労を軽減しようと「時間短縮!ペア箪笥」などさまざまアイデアを盛り込んだ。中国からの留学生である余さんは中国で婚礼時に用いられる「喜」の字を2つ横に並べた「双喜字」と呼ばれる漢字をモチーフとして使った椅子などを発表。「このような経験は学校の中ではできないこと。励みになるという声ももらった」。発表された学生たちの作品のうち、1つについては実際にモックアップを作る方向で動き出す予定だという。
今年度は日本工学院八王子専門学校(片倉町)とも産学協同プロジェクトに取り組んだ同社。2012年度にも新たなプロジェクトを予定する。「弊社はあくまで小売店なので、必ずしも商品化につなげられるような産学協同ではないかもしれないが、そうなるよう努力していきたい。こうした場を作ること自体が大事だと考えているので、その気持ちを大事にやっていきたい」