カーボンニュートラル賞とは
https://www.jabmee.or.jp/carbon-neutral/
時代は「低炭素」から「脱炭素」へと移っています。建築分野では、運用時に多くの温室効果ガスを排出しますが、建築設備士を初めとする建築設備技術者はこの削減に大きく貢献することができます。
本表彰事業は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた建築物、建築設備に関わる優れた業績を表彰することで、その意識の浸透と推進活性化を図ることを目的としております。
撮影:田中克昌
【設計者コメント】
南三陸町役場庁舎は、東日本大震災による津波で失われた旧町役場庁舎の建て替えプロジェクトとして計画されました。南三陸町は津波によりまちの中心部が無くなるほどの甚大な被害を受けており、復興に向けたかさ上げ工事が行われ、現在は復興まちづくりに取り組んでいます。高台に建てられた新しい役場庁舎は、失われたコミュニティ再構築のためのシンボル施設の役目を担っています。町民が気軽に訪れる敷居の低い庁舎として、「マチドマ(まちの土間)」のコンセプトが生まれ、庁舎機能という協働の場と一体となった、展示や小規模イベントが行える町民交流の場が形成されています。マチドマは閉庁時・窓口業務停止時にも使用が可能で、ハイサイドライトから柔らかい自然光が入り、町のブランドである南三陸杉材の構造体・仕上げ材に包まれ、熱源にバイオマス・ペレットボイラ(無圧式温水機)を利用した床暖房により、暖かみのある室内環境が実現されています。本施設は、上記以外にも、地中熱ヒートポンプを利用した床放射空調、20kWの太陽光発電+蓄電池、雨水利用など、建築材とエネルギー資源の地場産にこだわったエコロジカルな庁舎です。
本施設の設計中には地元の若いメンバーを交えたワークショップも開催されており、南三陸町の職員、県外からの復興応援職員、学識経験者、民間事業者など分野や立場の違う多様な関係者の方々の助言・助力を受けながら、本プロジェクトを進めてきました。カーボンニュートラル賞という環境への配慮が評価された賞を受賞することができ、プロジェクトに携われた皆さまに感謝申し上げます。
【建築概要】
名称:南三陸町役場庁舎
所在地:宮城県本吉郡南三陸町志津川字沼田101
建築主:南三陸町
設計者:久米設計
施工者:銭高・山庄建設JV
延床面積:3,772.65平方メートル
階数:地上3階
構造:RC/S/W
竣工:2017年7月
受賞:カーボンニュートラル賞/日事連建築賞/グッドデザイン賞/日経ニューオフィス賞/ウッドデザイン賞/日本建築学会作品選集新人賞/JIA東北建築大賞/照明普及賞/日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)/日本建築家協会優秀建築選
【設計コンセプト】
南三陸杉の大屋根の下で皆がともに時間を過ごす
東日本大震災の巨大津波により流失した役場庁舎の復興計画。津波被害と、その後の復興に伴うかさ上げ工事により失われた同町のコミュニティ再生の拠点として「マチドマ(まちの土間)」と名付けた交流空間をエントランス部に設けた。これは、人々が気軽に訪れるふだん使いの敷居の低い庁舎を目指し、また、人々の復興活動や協働を一つの大きな空間で内包し未来のまちづくりへ繋げることを意図したものである。平屋を基本としたその空間は、自然光が溢れ、風が通り抜け、里山の木のぬくもりが感じられる居心地の良い空間として計画している。また町のブランドである南三陸杉を構造体の格子梁や天井仕上げ、コンクリートの型枠等などに利用し、これらの取組みにより日本の公共施設として初めて、森林の国際認証である「FSC全体プロジェクト 認証」を取得。次世代の「バイオマス産業都市構想」を掲げる南三陸町をアピールする意味で、復興の一助ともなっている。
【会社概要】
株式会社久米設計
「豊かさ」を拓く。私たちは「豊かさ」とは何かを真剣に考える多様な個性の集合体です。地域・人を大切に、未来を見据えた新たな価値を創造していきます。
1932年の創設以来、数多くの都市、建築の設計を手掛けてきました。技術とデザインの融合を追求し、人と社会への貢献を目指す企業です。本社を東京都江東区潮見に構え、社員数約650名(約450名の資格を有する専門家)を擁し、国内外の幅広いプロジェクトに取り組んでおります。持続可能な社会の実現へ、技術とデザインで貢献してまいります。
URL:https://www.kumesekkei.co.jp/
所在地:東京都江東区潮見2-1-22
取締役社長 井上宏
【久米設計Instagram】
https://www.instagram.com/kumesekkei/