消える「津久井」を写真で残す-東京造形大学で「アーカイブスプロジェクト」

プロジェクトに参加する田山湖雪さんの作品 © 2010 Tokyo Zokei University.

プロジェクトに参加する田山湖雪さんの作品 © 2010 Tokyo Zokei University.

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 東京造形大学(八王子市宇津貫町)で現在、4月に政令指定都市に移行し、その名が変わる神奈川県相模原市津久井地区を写真で記録していくプロジェクト「津久井アーカイブスプロジェクト」が進められている。

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 同プロジェクトは同大学造形学部デザイン学科写真専攻領域の柳本尚規教授が中心となってスタート。同地区を長期間にわたって観察・記録していくもので、同専攻の科目「ドキュメンタリーフォトグラフィB」の実践課題として学生たちが取り組んでいる。「学生が制作する作品は実にさまざまで、多様性に富んでいる」と柳本さん。そこで、写真を使って「社会記録として位置付ける視点を明確にしてみたい」とプロジェクトを立ち上げたという。

 津久井地区は神奈川県の北西部に位置し、津久井町・相模湖町などからなる。周囲を八王子や山梨県上野原などに囲まれ、その立地から織物産業などが発展。「地域として完結しているため、独立した歴史と生活文化をもっているのでは」と柳本さん。このことに加え、大学の最寄り駅からバスで30分ほどという距離も決め手となり、プロジェクトの主題となった。

 町並みや看板、祭事、人の姿など、あらゆるものが被写体となっている。「バスに揺られて通い続けて、あとは何の指示も受けずに学生は勝手に徘徊(はいかい)する。そうした撮り方で進めている」。昨年12月には津久井中央公民館(相模原市)で写真展も実施。地元の人や写真展を訪れた人からは、「学生たちがうろうろしているだけでも見ていて楽しい」などと励まされたという。

 同地区は政令指定都市への移行に伴い、「相模原市緑区」という新しい地名が与えられることになっている。プロジェクトは名前が変わることとは無関係に始められたものだが、結果として「変わり行く津久井、さまざまな地域を融合して営まれてゆくことになる相模原市の時間の推移に立ち会ってゆくことになった」と柳本さん。「建物のファサードに張られていた『津久井』の文字がはがされて、その痕跡が日焼けしなかった跡として残っていたり、翌週に行ってみると『相模原市津久井地区』という文字に変わっていたりと…そうした光景を目の当たりにした」。

 プロジェクトは次年度以降も続けていくが、撮りためられた写真をどのように扱っていくかも今後の課題だという。「資料としてどのように整理し活用するかということも同時に検討・研究していかなければならない」と柳本さん。

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