‐今回は多摩美術大学から同キャンパスに会場を移し、日程も2日間に延長されました。どのようなイベントになると思いましたか?
船田 「空間的にも時間的にもキャパシティーが増えて、参加する人みんなが思う存分盛り上げられるのではないか、と想像しました。それから、緑に囲まれた環境で気持ちよくやれそうだな、という予想です。実際そうだったと思います」
‐実際終えて、いかがですか?
船田 「楽しみ方のバリエーションが増えたように思います。芝生でお弁当を食べたり、ライブハウス感覚で音楽を楽しんだり、といった過ごし方も加わって、より幅広い人々に受け入れられるのではないかな、と」
‐今回も数多くの参加者が集いましたが、何か印象に残る出来事はありましたか?
船田 「若い、新しい才能がさらに増えたことでしょうか。一方で企業の参加も増えました。イベントとして成長したなあという印象を持つことが度々ありました」
‐船田さんというと、最近ではスタパ齊藤さんらと「武蔵野電波ブレッドボーダーズ」【注1】を結成したり、日本におけるArduino(アルドゥイーノ)【注2】の先駆者としての活動が印象に残るのですが、今回のイベントで気になった電子工作はありましたか?
船田 「従来型の電子工作に、これまで電子工作にはあまり使わなかった素材を組み合わせた作品がやはり面白いですね。ブレッドボードやArduinoの知識が普及することで、これまで近づかなかった人たちも、かなり気軽に挑戦できるようになってきた気がします。新しく参入してくる人たちはまだまだ増えそうですので、これからさらに『予想外の組み合わせ』が登場するのではないでしょうか」
‐今後の希望があれば。
船田 「日本のMakerがさらに増えることですね!」
‐そういえば、個人的に船田さんがやられていた「Alt-R(オルトアール)」【注3】を使わせていただいていました。
船田 「ややや!ありがとうございます。Alt-Rは仮想空間のリアリティでしたが、Makeのイベントはリアル空間の非日常みたいな感じかなと思っています。どっちも楽しいですね」
Makeのイベントはまだ今回で3回目。しかし、イベントの来場者数は前回より900人ほど増えて、「約2,100人となった」とオライリー・ジャパンの瀧澤さん。数を重ねていくことで、より個性的なイベントになっていくことだろう。
【注1】ライターのスタパ齊藤さんや上杉季明さんによる電子工作ユニット。「武蔵野電波」はこの3人で立ち上げた会社の名称で、電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行う。2008年にはインプレスのサイト「PC Watch」で同名の連載も展開した。
【注2】イタリアのArduinoチームが進める入出力を備えた小型基盤とソフトウェアの開発環境で構成する統合開発環境のこと。ソフトウエア、ハードウエア共にオープンソースとなっているため、チーム公認の環境に加えて互換環境なども作られ、電子工作の世界で静かなブームとなりつつある。船田さんは著書「Arduinoをはじめよう」(オライリー・ジャパン)の日本語版翻訳を担当した。
【注3】船田さんらが2000年~2007年12月に運営していたコミュニティーサイト「Alt-R 総合雑談中心」のこと。「Alt-R」はAlternative Realityの略で、公開型メーリングリストと掲示板が合わさった形の「MLX」システムを開発、携帯電話から写真付きの記事が投稿できるなど、当時としては画期的なサービスを実現していた。開始当初はスタパ齊藤さんなどが参加した「メーリングリスト5人組」やイラストレーター・漫画家の寺田克也さんなどが参加した「メーリングリスト38年組」などシステムを利用したコンテンツに加え、さまざまなコラムも提供。2001年4月にはそれらをまとめた単行本「オルトアール総合雑談中心」(アスペクト)を出版している。その後、「雑談解放区」の名でシステムを一般にも開放し、数多くのユーザーが利用した。
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