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東京高専生、世界大会で日本初の準優勝-マイクロソフト主催の技術コンテスト

「Coccolo」のタンさん(最左)、田畑さん(中央左)、赤松さん(中央右)、大川さん(最右)

「Coccolo」のタンさん(最左)、田畑さん(中央左)、赤松さん(中央右)、大川さん(最右)

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 豪・シドニーで7月に行われた学生向けの技術コンテスト「Imagine Cup(イマジンカップ) 2012」に国立東京工業高等専門学校(八王子市椚田町)の学生チームが出場し、日本初となる「ソフトウエアデザイン部門」準優勝の記録を残した。

準優勝のトロフィーを持つ「Coccolo」のメンバー

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 出場したのは、同校専攻科機械情報システム工学専攻2年の大川水緒(みお)さんを中心としたチーム「Coccolo(コッコロ)」。情報工学科の小嶋徹也准教授をメンターに迎え、目に見える光を活用した通信技術「可視光通信」を使って、照明同士が情報をやり取りし、明るさを調節する省電力照明システム「All Lights!」を開発、提案した。

 昨年度の「全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)」自由部門で最優秀賞を受賞した同システム。東日本大震災を受け、これまで取り組んできた可視光通信と節電のニーズを組み合わせようとアイデアを練り上げ、実際に照明機器メーカーに企画を持ち込むなど、その積極性も評価されて日本代表3チームの1つとして選出。世界大会に駒を進めた。

 学年も学科も異なる4人による同チーム。課外授業で出会ったことがきっかけとなり活動を開始。大川さんと同じ機械情報システム工学専攻2年の田畑愛実(めぐみ)さんがソフトウエア、電気電子工学科2年の赤松駿一さんがハードウエア、翻訳を情報工学科5年のタン・トゥンジェさんが、それぞれ担当し、放課後や土曜、日曜を活用して作業を進めた。「みんなで作って発表するような事自体がこれまでなかった」と大川さん。「しんどい時もあったが、みんなでやるのは楽しい」と話す。

 時には、「ハードができていないのに、プログラムはデバッグまで来ていたこともあった」と赤松さん。みんなではんだごてを握り、抵抗やコンデンサーなど1ミリ程度のサイズのチップなどを手作業で取り付けたこともあるという。「LEDだけで1つに100個。全部で1200個もよく付けた」と大川さん。「はんだ付けの能力もアップしたと思う」と笑う。

 出国時には100円ショップで購入した米びつに入れて運ぶなど注意を払ったが、セキュリティーチェックに引っかかるなどのトラブルに遭遇。オーストラリア到着後もケーブルが条件を満たさない、展示ブースにチェックが入るなどの問題が発生し、一時は出展が危ぶまれる事態に陥った。「オープニングイベントで周りが盛り上がっていても、私たちはお通夜みたいだった」と大川さん。現地のスーパーやホームセンターで部材を調達するなど対応に追われ、「練習しようと思っていた時間はほとんどつぶれてしまった」と小嶋准教授。

 世界大会では、制限時間内に審査員を前にしたプレゼンテーションや質疑応答を行う第1次審査、より詳細な質問などがなされる第2次審査を勝ち進んだチームのみが、世界各国のメディアなどを前に公開プレゼンテーションを行う最終審査へと進む。今回、同部門には各国の予選を勝ち抜いた72チームが登場。第1次審査の段階で20チームにまで絞られ、ファイナリストとして残ったのは、「Coccolo」を含め6チームだった。

 2メートル四方のブースを展開し、映像でシステムを紹介していた同チーム。しかし、最終日は多くの人が来場することもあり、急きょその場でミニブースを製作し実演できるよう工夫を凝らした。「最終審査の結果が発表になるのが23時ごろと時間があったので、待っている間に話し合って作業を始めた」と大川さん。

 当日はシステムの紹介や実演だけでなく、システムを活用することで得られる未来の姿をまとめたビデオなども上映。会場からは手拍子が起き、「ショーのようだった」と反響が寄せられるほど観客から評判を呼んだ。周囲の反応を見て、「最初の数秒で感動してしまった」と田畑さん。プレゼンテーションの模様はユーチューブで公開されており、この場でも、「素晴らしい」「本物のプレゼンテーションを見た」などのコメントが残る。大川さんは「ファイナルでは最高のプレゼンテーションができた」と振り返り、「ドタバタした割には、やりたいことは全部できた。悔いはない」と話す。

 今年の同部門はウクライナのチーム「Quadsquad(クワッドスクワッド)」が優勝。「Coccolo」は日本初となる準優勝を獲得した。日本の学生が持つアイデアや技術が世界に通用することを証明してみせたが、「やっぱり1位のほうが良かった」と大川さん。「悔しさはずっと残ると思う」としながらも、学校に戻ってきた際には寄せ書きなどで全校挙げてチームを迎え入れた光景に、「疲れも吹っ飛ぶほど感動した」と話す。「やっぱり世界2位は違うんだなと実感した」と笑う。

 ここ1カ月は平野博文文部科学大臣、石森孝志八王子市長などへの表敬訪問や取材対応などで瞬く間に過ぎた。今後はシステムの実証実験や今秋に行われる文化祭での発表などに備える。「細かいデータが取れていないなど、まとめるにはまだまだ。やらなければならないことはいっぱいある」と大川さん。

 今回の経験を踏まえて、「自分たちがやりたいことがよくわかったのでは」と小嶋准教授。リーダーとして動いた大川さんは「サポートしきれなかったこともあって残念」としたうえで、「女性リーダーとしていろいろなことを身につけたい」と意気込むほか、赤松さん、田端さん、タンさんもそれぞれ未来のエンジニアとして目標を述べた。

 同コンテストは2003年から米・マイクロソフトが主催し実施。今年は同部門のほか、家庭用ゲーム機「Xbox」、Windowsなどを対象としたゲームデザイン部門などを展開。180カ国を超える地域、35万人以上の学生が参加する。同校は1965(昭和40)年に開校。機械工学科、電気工学科、電子工学科、情報工学科、物質工学科の5学科と専攻科を展開し、約1000人の学生が学ぶ。

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