東京工科大学(八王子市片倉町)メディア学部の学生らが手掛けたiPhone・iPad向けに作られた時間管理アプリ「桜のしらせ針」とパズルゲーム「ハノイの本」が5月下旬から、iTunes Storeで順次リリースされた。
「桜のしらせ針」は、取り組まなければならないタスクを桜の花に見立て、花を咲かせることで時間管理を行うことができるアプリ。和の様式にこだわったデザインを採用し、最大で24のタスクを管理することができる。「ハノイの本」は、数学パズルとして有名な「ハノイの塔」をモチーフとしたパズルゲームで、散らばった本を本棚に整理するというゲームシステムになっている。
今回のアプリは、2011年春にスタートした同大のプロジェクト演習「Creative Application」の履修者が制作。演習には学部生のほか、院生など、さまざまな人も参加。2011年秋ごろからは、「レトロモダン」「整理整頓」などをテーマに掲げ、アプリ開発に取り組んできた。今回公開されたものは、それぞれの開発チームが授業を通して作り上げたアプリのブラッシュアップ版に当たるという。
「桜のしらせ針」は、同学部3年の松藤さん、竹内さんと現在は卒業生の内野さんら女性3人がチームを組んで作り上げたもの。プログラミングの経験すらない3人だったが、「三色だんご」というチーム名を付けて取り組み、「時間が過ぎることを可視化したい」「スケジュール管理をうまくできるようになりたい」といったアイデアから機能をまとめ上げていったという。「最初のバージョンは時間の無駄を省くための基本的なアプリだった」と内野さん。
開発は昨春にいったん終了したが、レイアウトやデザインなどを含めて見直そうと秋ごろからチームとして再始動。図書館で江戸時代の画家・伊藤若冲(じゃくちゅう)の資料と出合ったことから和を意識したデザインになっていったという。「美術の勉強をちゃんとし直したら、ものの見方が変わった」とグラフィックなどを担当した竹内さん。和の世界観に合うようドット柄の背景を作り上げ、桜がアニメーションにも工夫を凝らすなど意欲的に取り組んだという。
アプリを公開しようと決めたのは今春。米アップル社の開発者向けIDを取得するため、わざわざクレジットカードを作るなど苦労もあったが、5月下旬、1週間ほどの短期間の審査で公開にたどり着いた。「日頃の行いが良かったのかも」と松藤さん。「やっていることはシンプルだが、思い入れがあるアプリ。皆さんの生活がちょっとでも豊かになれば」と利用を呼び掛ける。
「ハノイの本」は、同大4年の日置さん、修士課程1年の安藤さん、博士課程3年の戀津(れんつ)さんらが開発したアプリ。「ハノイの塔」をレトロモダンな遊びとして捉え、本棚の整理という新たな形に再構築することでゲームとしてまとめ上げた。こちらもいったんは開発を終えていたが、昨秋、戀津さんが個人的な勉強も兼ねてアプリに取り組み直そうとしたことから、再び開発メンバーが集まったという。
新たなバージョンの開発にあたっては、本を整理するというゲームのシステム自体は守りながら、サウンド面でこだわりを入れるなど各所で工夫。「作業は基本的にみんなで集まって行い、時にはその場で仕様が変わることもあった」と戀津さん。「研究室に入り浸りだったこともある」とも。メンバーの1人が骨折で入院した際には、病院からネットを使って開発に参加するなど苦労も重ねたという。
6月上旬に公開されたアプリは、公開から1カ月とたたないうちに1万ダウンロードを超えるなど好調。「さりげないが音の演出には力を入れたので、ぜひ試していただきたい」。今後は多言語化などメジャーアップデートも進める方針で、戀津さんは「ようやくスタート地点に立った」と意気込む。
「桜の知らせ針」はiOS 6以降、「ハノイの本」はiOS 5.1以降に対応。無料。