工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に拠点を置く「ソーラーカープロジェクト」は11月11日、オーストラリア大陸約3000キロをソーラーカーで縦断した「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(WSC)」の報告会を行った。
同大新宿キャンパスで行われた今回の会見。プロジェクトの監督を務める同大機械システム工学科の濱根洋人准教授のほか、チームリーダーを務める同大機械工学専攻修士2年の大原さんらも参加した。
同プロジェクトが参加した「クルーザークラス」は、4輪で2人乗り以上という、より実用車に近いレギュレーションが設定されている部門。国内からは唯一の同クラス参戦チームとして、新型ソーラーカー「OWL(アウル)」を投入し戦いに挑んだ。
スタート地点であるオーストラリア北部の街・ダーウィンを22番手で出発。大会前よりスピードで得点を稼ぐことを明言していた同プロジェクト。その言葉通りに1日目から快走し、そのままの勢いでレースの中間地点であるアリススプリングスまでの「ステージ1」をトップで制した。
後半戦に当たる「ステージ2」もクラストップで走り出したが、大会側から横風による車体の安定性不足を指摘され、「初日から70キロ制限のペナルティーを受けた」と大原さん。「突然オフィシャルカーが現れて、トレーラーで次のコントロールポイントまで運ぶか、時速70キロに制限するか選ぶよう言われた。レギュレーションには記載されていないし、他のチームでもふらついていたところはあったのに、なぜ指摘されたのか分からない。70キロの根拠も不明で、なぜリタイアとなるトレーラーでの運搬を提案されたのかも分からない」と疑問を隠さない。
速度制限は映像などを利用した抗議が認められる翌日まで4時間40分にわたって課せられ、ドライバーの交代や安全確認などのために取った停車時間20分と合わせて大きなロスとなった。「速度制限を解除された後は少しでもほかのチームとの差を広げることに必死だった」と大原さん。ゴールに近いポートオーガスタからは一般車も増えるため速度低下が見込まれたが、結果として96.8キロという平均時速で走り抜き、ゴール地点であるアデレードではトップでゴールインした。
その後、坂道発進・縦列駐車・3点Uターン・5分以内に荷物を積めるかなどの実用面の評価や外部審査員による審査が行われ、総合優勝は2位でゴールした「Eindhoven」チームに。同プロジェクトは残念ながら念願の優勝を果たすことはできなかった。
この審査についても、大原さんは「テレビ局のアナウンサーが審査員を務めるなど、レギュレーションを必ずしも正しく把握しているかどうか分からない人もいたし、主観が入りやすかったのでは。得点配分も明らかにされておらず、坂道発進などは運転技量の問題のようにも思う」と疑問を呈した。
今大会を振り返り、「クルーザークラスは黎明(れいめい)期でレギュレーションが未完成。国際コンペティションとして採点基準の早急な整備が求められる」と大原さん。「準優勝という結果に落胆はしたが、やるべきことはやったので悔いはない。カーレースを追求できたし、全ての力を出しきれた」と笑う。
プロジェクトの代表を務める同大機械システム工学科の濱根洋人准教授は「カーレースはレギュレーションを考え抜いて、いかに工夫してベストを尽くすかの頭脳プレー。学生はベストを尽くした」と高く評価した。
今回受けたペナルティーについては「今後、日本から参戦するチームのためにも、これから正式に文章で抗議をする」としたうえで、「クルーザーの幅は広いと思っていて、学生が一から設計して進める教材としてはものすごくいい。ファミリーカーにするか、スポーツカーにするかといろいろあるが、学生にはこれからも工学院大学としてオンリーワンの車を作ってくれるはず」と次回大会を見据えて期待を込める。