1月に「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞に選ばれた東京工業高等専門学校(八王子市椚田町)でスポーツ観戦システム「シンクロアスリート」を手掛ける学生5人が2月15日、八王子市役所で石森孝志市長を表敬訪問した。
ものづくりに携わる優秀な人材を表彰する同賞。同校情報工学科5年の冨平準喜(としき)さんら5人が2016年度の「全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)」で文部科学大臣賞に選ばれたことを受け、今回、「ものづくりの将来を担う高度な技術・技能(青少年部門)」で内閣総理大臣賞を受賞。1月22日に首相官邸で行われた授賞式では安倍晋三首相から賞状などが贈られた。
「シンクロアスリート」は、スポーツ選手の動きと選手から見た360度の視界をリアルタイム配信し、シミュレーターを通すことで選手の体験を共有できるシステム。東京都カヌー協会や江戸川区の協力を得て、カヌー競技の様子を体験できるコンテンツを作り上げており、体験イベントも好評を博しているという。
今回の表敬訪問では冨平さんがシステムについて紹介した上で、石森市長がヘッドマウントディスプレーを身に付けカヌー選手の動きを体験。体験を終えた石森市長か「酔っちゃうね」と話すと会場からは笑いが起こった。
「受賞されたという知らせを聞いて、さすが東京高専だなと思った。八王子は多くの製造業が立地しているものづくりの街という一面がある。こういった快挙を成し遂げたことは企業にとっても大変うれしいこと。2年後にはオリンピックもあるので注目されるシステムなのでは」と石森市長。
もともとは2015年秋に行われた学園祭「くぬぎだ祭」に向け、「ジェットコースターを作りたい」との思いから企画。その後、「プロコン」への出場に合わせてチューニングを進めていったという。開発には約20人の学生が携わり、昨年11月には実際の製品化もにらんで持ち運びや騒音の改善、デザインの改良などを施した2号機を完成させた。
チームメンバーで同学科5年の吉川千里さんは「個々で開発したものを結合させて動かすことは、1人ではできないこと。やってみたら動かないこともあり大変だった。いろいろなことができるメンバーが運よく集まっていた」と振り返る。開発を終え「洗濯機程度の大きさのもので家でジェットコースターに乗れる時代になった」と話す。
「東京都カヌー協会の方にもプレーの動きが再現できているとの言葉を頂いており指導にも使えると考えている。カヌー以外にもいろいろなところで使いたいというお話も頂いている」と冨平さん。「このシステムのいいところは選手の動きをリアルタイムに体験できるところ。2020年にはオリンピックの競技場の側に何台も置かれて、競技が始まったらみんなで体験するようになったらいい」と今後に期待を込める。