絵はがきを基に八王子の地域文化を振り返る書籍「絵葉書でみる八王子市の100年 -八王子地域文化の再発見-」の4月中の完成に向け、制作作業が佳境を迎えている。
フリーペーパー「はちとぴ」などを発行している清水工房(八王子市追分町)の出版事業部門「揺籃(ようらん)社」から刊行される同書。市史編さん審議委員を務めた経験もある地元出身の村松英二さんによるもので、八王子が市に移行した1917(大正6)年から昨年までの間に発行された地元にまつわる絵はがき157枚を通して、八王子の歴史や文化を振り返るものとなっている。
表紙には再開発前まで八王子駅北口に置かれていた「織物の八王子」と書かれたシンボルタワーの絵はがきを採用したほか、金剛院(上野町)の山田一眞院主が書いた題字もデザイン。「市外・街並」「公共機関」「鉄道・駅」「神社仏閣」「名所・旧跡」「学校・教育」「織物となりわい」「まつり」の8章から成り、絵はがきに合わせて歴史や解説、図面なども充実させた。このほか、絵はがきの写真が撮影された場所を一覧できる地図や八王子の100年をまとめた年表なども掲載。
子どもの頃から八王子について調べてきたという村松さん。13年ほど前からネットなどを通じて地元に関わる絵はがきを集め始め、その数は既に1000点以上になるという。「中には海外から手に入れたものもある」。2011年には集めた絵はがきを使って展示会も開催し、その際に図録も制作したという。
昨年、八王子が市制100周年を迎えたことを受け、以前出した図録を発展させる形で新たな本を企画。「絵はがきから常識とは違う歴史が見えてくるところもある。ある程度集めたつもりでも見たことがないものが出てくる面白さがあるし、それだけ八王子は都市として文化を形成していたのだと思う」と村松さん。「断捨離の時代だが地域資料は歴史を垣間見る上でとても大事。お持ちの資料を捨てないでほしいという思いもある」とも。
編集を手掛ける山崎領太郎さんは「絵はがきは個人的な写真の記録ではなく、周辺の人に知ってもらいたいから出すもの。PRしたい、八王子はこんな街なんだということを言いたい人がいっぱいいたんだということで、絵はがきを通して八王子は地域の人に愛された街だということを改めて知った。今までにない本になったと思う。増刷の予定はないので、早めに買っていただければ」と話す。
市制100周年を迎え、村松さんは「次の100年を輝いてもらうためにその一助になれば。一堂に介して見られるということはそうないと思うので、多くの人の手に渡って感じ取ってほしいというのが願い」とアピールする。
4月28日・29日には同書の出版を記念した展示会も開催。作品に登場する実際の絵はがきを展示するほか同書の先行販売も行われる。会場は八王子市学園都市センター(旭町)第1ギャラリー。開催時間は9時~18時(29日は16時まで)。
A4版、76ページ。価格は1,500円(税抜き)。5月上旬から書店に並ぶ予定で、2000部限定。