八王子市が2月6日、2021年度予算案を発表した。
予算規模は、一般会計が前年度より10%増の2,209億円、特別会計が約7%増の約1,968億円、合わせて4,399億5,850万円と過去最大規模となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、個人・法人市民税、固定資産税など市税収入は約6%減る中、2022年度の稼働開始に向け、新館清掃工場の建設工事にかかる費用や保健所の管理・運営コストの増加などで、衛生費が約47%増加したことなどが影響した。
全体で約5.1ヘクタールの空間がある八王子医療刑務所跡地については、老朽化が進む八王子市郷土資料館(上野町)の機能を移転させた「歴史・郷土ミュージアム」など一体を「集いの拠点」としての整備することに向けて、国と都から用地を取得することを決めた。用地取得費などとして約51億7,000万円の予算を計上しており、今後は2022年度中に整備運営事業者の公募・選定、2023年度に施設設計・整備工事を行った上で、2026年度に開設する予定だという。
京王八王子駅近くの旧東京都産業技術研究所八王子支所跡地(明神町3)で建設が進められている「東京都立多摩産業交流センター」の2022年2月に完成予定を前に、旭町・明神町など中心市街地の整備に向けた事業に関する予算も盛り込んだ。同所に隣接している八王子市保健所(旭町)が同センターとの複合施設に移転することから、現在の保健所が跡地となった後、広場として整備するための設計委託料などが含まれる。
北野地区について、1月に都流域下水道に編入された北野下水処理場や、今後、新館清掃工場が稼働することで北野清掃工場が停止することを受け、これらの跡地を使って、「環境とエネルギー・防災の拠点」をコンセプトに新たに活用するための基本構想を策定する。
石森孝志八王子市長が「北口側は地元からも要望がある」と明かした西八王子駅周辺地区のまちづくりに向けた方針策定も進める。
そのほか、民間企業が市内にコワーキングスペースやシェアオフィス、自社従業員向けのサテライトオフィスを設置するための整備費の一部を補助したり、サテライトオフィスを設置する企業の従業員に1世帯当たり10万円の奨励金などを支給したりすることで移住を推進する施策も盛り込んだ。
市民サービスへのチャットボットサービスの導入、マイナンバーカードとスマートフォンを使った本人確認や電子決済を通して、市役所を来庁しなくても住民票の写しなどを郵送で取得できるようになるオンライン手続きシステムの活用といった、「新しい生活様式」に対応した取り組みも行う。
新年度予算と合わせて、新型コロナウイルスワクチンの接種に向けたコールセンターの開設や、ふるさと納税の新たなメニューとして昨年6月に加えられた「八王子市新型コロナウイルス感染症対策支援寄付金」を活用し、地元フードバンクへの支援や医療従事者に「八王子エール便」として、市民からメッセージと共に八王子ゆかりの品を送る事業などを行うための2月補正予算も組んだ。
石森市長は「全身全霊を懸けて感染拡大防止に努めるとともに感染症により影響を受けた市民生活、地域経済を回復し、ポストコロナ時代の新たな日常を構築する内容となった。新年度予算は過去最大規模で、清掃工場の建設や『集いの拠点』の整備など大型事業を進めている関係でこのようになった。大型事業については着実に推進していきたい」と説明する。
まちづくりについて、石森市長は「八王子の顔となる八王子駅周辺の整備は大変重要で、少しずつ前進してきた」とこれまでを振り返った上で、「念願であった産業交流センターが来年度に出来上がるので、これを生かした新たなまちづくりは街の活性化の大きな起爆剤になるし、将来にとっての明るい材料だと思う。南口の『集いの拠点』も駅から近い位置になるので、市民の皆さんが憩うことができる場所にしていきたい。西八王子の北口は以前からまちづくりが進んでいない状況。なんとか北口を中心に方向性を示していければ」と気合を入れる。