印刷会社「清水工房」(八王子市追分町)が甲州街道沿いの旧宿場34カ所をつなぐ企画「甲州街道御宿場印めぐり」を始めて1カ月がたった。
寺社で参拝者に頒布される御朱印のアイデアを街道の宿場町に当てはめた「御宿場印」。今回は起点である日本橋から下諏訪宿まで、約205キロある甲州街道の宿場を巡るものとして企画し、5月1日から展開している。八王子観光コンベンション協会(旭町)が企画協力し、新宿観光振興協会、調布市観光協会、府中観光協会、日野市観光協会など甲州街道沿いの東京都・山梨県・長野県に拠点を置く各観光団体などが連携する。
御宿場印は、はがきサイズで各宿場を訪れた人に販売する。「訪宿記念 甲州街道」の文言と宿場の名称と共に、訪れた日付を入れられるようになっている。宿場ごとに34種類を用意しており、それぞれの宿場で販売している。都内は「日本橋」「内藤新宿」「下高井戸・上高井戸」「布田五宿」「府中」「日野」「八王子」「駒木野・小仏」で行っている。
御宿場印はもともと東京~埼玉~栃木間を結ぶ日光街道の宿場を対象に、2021年に足立成和信用金庫(足立区)の発案で始まった。清水工房で「甲州街道御宿場印プロジェクト」に携わる増沢航さんは「コロナの時期に地元でできることがないかと考え始まったと聞いている。甲州街道でもやろうと八王子観光コンベンション協会から声をかけてもらい面白いと思った」と話す。
各宿場の街の人たちの理解を得ながら、1年半がかりで実現にこぎ着けた。「その街の担当者から隣の街の人を紹介してもらうなど旅していくようにつながっていった」と増沢さん。「私のルーツが諏訪で、ゴールとなる下諏訪の本陣の方とは縁があった。そのつてで長野県内の宿場に声をかけてもらった。実現に向けて全精力を注いだ」とも。御宿場印の背景は各宿場を表現したイラストや写真を使っているが、「現場で担当している人が盛り上がらないとだめだと思ったので、地域として何を売り出したいかなどを聞いて、地元の人と一緒に作った」と話す。
「御宿場印は全部をそろえなければいけないものではない。気負わず気が向いた時にちょっとずつ楽しんでもらえたら。その場所に行っていただくことで発見があるはず」と増沢さん。「今後、地域のイベントに合わせた期間限定の御宿場印も企画できたら」とも。
御宿場印は1枚300円。「八王子」は「まちなか休憩所 『八王子宿』」(中町)、「駒木野・小仏」は、高尾山口駅横の観光案内所「むささびハウス」(高尾町)で販売するほか、清水工房の店頭でも販売する。「御宿場印帳」(3,000円)も用意する。
プロジェクトの展開に合わせて、同社の出版事業部門「揺籃(ようらん)社」は、大高利一郎さんによる著書「街道を歩く 甲州街道」の新版を4月22日に発刊した。改訂は2011(平成23)年に発刊した増補改訂版以来で、同社は「甲州街道のガイドブック」と位置付ける。A5判、264ページ、1,800円(税別)。
増沢さんは「大高さんが実際にツアーガイドとして歩いた経験と研究を踏まえ、持ち歩いてもらう物として作った。10年たつと道が変わったり、信号の名前が変わったり、史跡に設置されている説明が変わったりと大きく変わっている。御宿場印巡りの時に使ってもらいたい」と話す。