試作品の製作などを行う菊池製作所(八王子市美山町)は10月28日、大阪証券取引所が運営する株式市場「ジャスダック」に上場した。
同社は1970(昭和45)年創業。市内の美山工業団地に本社、福島県飯館村に主力工場を展開。金属成形、加工、精密プレスなど多くの加工技術を自社内で持ち、開発から量産まで可能な総合力を強みにデジタルカメラや携帯電話など製品の試作品を手掛けるメーカーとして知られる。創業以来赤字は出しておらず、今年4月期の売上高は65億円。
上場について、経営企画部の乙川さんは「創業者の菊池が従業員の生活向上など大きな目標を持とうと15年来掲げてきたもの」と話す。2008年にも上場実現に向けて大きく進んだが、その際には直後にリーマンショックが発生。その後、市場の動向を見ながら様子を見ていた。
同社の工場がある飯館村が福島第一原発事故の影響で計画的避難区域に設定されるなど問題が残る中での今回の上場。「見送ろうと思えばいつでも、いつまででも、どのような理由でも見送ることができてしまう」と乙川さん。「今この状態でも行くんだ、というのが社員の意気込みにつながる」
今後は試作製作をメーンに、新たな製品や技術の開発にも取り組んでいく方針。現在、本社には「ものづくりメカトロ研究所」を展開し、助成金などを活用しながら年間5~10%ほどを供出。大学や企業と連携し、共同で医療ロボットをはじめとした製品開発を進めているほか、通常よりも微細な形状のアルミ鋳造品を作ることができる「アルミホットチャンバー」など新技術の開発も進めている。
自身も開発経験があるという乙川さん。これまでの経験なども踏まえ、「もともと試作はむちゃな要求に対応するもの。出された話には全部乗る」と話す。「これからも大学や企業などの皆さんのアイデアを推進していきたい」とも。