「教育分野におけるノーベル賞」ともいわれる「The Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー・プライズ)」のトップ50人が12月9日に発表され、日本人として初めて工学院大学付属中学校・高等学校(八王子市中野町)の高橋一也教諭が選ばれた。
英国の国際教育機関「バーキー財団」が昨年創設した同賞。優れた教師の功績をたたえることを目的としており、2回目となる今回は世界148カ国、8000人の中からトップ50人を選出。この50人の中からさらに10人に絞り込み、来年3月にドバイで開催されるイベントの場でのプレゼンテーションを経て、最終的な受賞者が決まる。
帰国生やインターナショナルスクール出身の子どもたちも多く通う「ハイブリッドインターナショナルクラス」
米国の大学院でプロジェクトを題材とした「PBL(Project Based Learning)」やアクティブラーニングなど効果的な教育方法について考える研究を進めていた高橋さん。研究者時代には英・ケンブリッジ大学や大英図書館とともに貴重書のデジタル化プロジェクトなどにも携わっていたが、「どうしても教師になりたいという夢を追いかけたい」と日本に戻り、2008年から教員の道に。現在は今年から中学校に新設された「ハイブリッドインターナショナルクラス」の担任を務めながら、英語科の教員として高校の授業も受け持っている。
「レゴブロック」を授業に取り入れたり、宇宙エレベーターコンテストへ挑戦したり人間とチンパンジーの言語を比較したりするなど、さまざまな取り組みを授業の中で行ってきた高橋さん。高校生を対象とした授業では、インドネシアの高校とコラボし、現地の社会起業家とともにプロジェクトを進めるなど新たな取り組みも進めている。
「子どもたちができないのは教員のせい。子どもたちの可能性をとことん信じている」と高橋さん。「違う文化に対して寛容な心、社会貢献する心、そして常識を疑うことが大事。そのために、いろいろな視点を用意してあげることが必要」と話す。
今回トップ50人として選ばれたことについて、「率直にうれしい」と高橋さん。「自由にやっていいと言われているから」と笑いながらも、「『言葉って何だろう』という疑問から言語心理学を引っ張ってきて、ノーム・チョムスキーやチンパンジーのフォトグラフィックメモリーの話に膨らませていけるのは研究者としてやってきたことが生きていると思う」と振り返る。
八王子に向かう電車の車中で課題作りを行い、今月末には冬休みの時間を使ってインドネシアに向かうなど忙しい日々を送っているが、ドバイに行くチャンスが与えられた際には「日本の教育は素晴らしいことを世界に発信していきたいし、格好いい先生の姿を見せたい」と高橋さん。「日本にも良い先生はたくさんいるのに、その授業をシェアする機会がない。今後はエッセンスを抽出して、シェアできるようにしたいし、学校と学校の外をつなぐようなこともしていきたい」と意気込む。