学ぶ・知る

実践女子大で「1年後の卒業式」-昨年は震災で中止、卒業生あらためて集う

学位記に代わり「証状」を授与

学位記に代わり「証状」を授与

  • 41

  • List
  •  

 実践女子大学日野キャンパス(日野市大坂上4)で3月17日、東日本大震災の影響で中止された昨年度の卒業式に代わるイベント「1年後の卒業式」が行われた。

式典を前に記念写真を撮る人も

[広告]

 同大学では昨年度、院生=13人、学部生=887人、短期大学生=365人が卒業・修了を迎え、昨年3月17日に学部と大学院、同19日に短期大学の卒業式・学位授与式を予定していた。しかし、直前の東日本大震災の影響やその後の計画停電への対応などを受け中止を決定。今回、昨年開催できなかった卒業式代わりのイベントとして職員の提案で企画された。

 震災以後、被災地出身の学生への対応に向けてカウンセラーを増員するなど、「就学支援と経済的支援、心の支援、学生生活支援の4つのプロジェクトを動かしてきた」と同大学総合企画室部長の寺沢さん。卒業生へは進路や就職に関する相談などを受け付けるキャリアセンターを通じて対応。この場で卒業式が開催されなかったことで、「何か穴が開いたような感じ」などの声が寄せられたことがきっかけとなった。

 「私たちから中止してしまったので、できる限り早い時期に卒業式に代わる、心を込めた卒業生を励ますイベントができないかと考えていた」と同大学の湯浅茂雄学長。既に学位記は授与されており、卒業式をあらためて行うことはできなかったが、「教職員合わせていろいろな知恵を集めて、派手ではないが心のこもったお迎えができればと企画した」と話す。

 卒業生にはイベントの案内として、桜の花びらをかたどったカードを送付。在校生の言葉を添え、昨年12月24日・25日のクリスマスに届くよう準備した。「事務職の若手を中心にどんどんアイデアを出してくれて進めてくれた」と湯浅学長。院生=3人、学部生=522人、短期大学生=182人の卒業生から「参加」の返事が届き、当日も用意された席はほぼ全て埋まった。「これだけ多くの学生が帰ってきてくれて、われわれが励まされているような気がする」

 当日は、この一年新たな生活を送ってきた卒業生たちが再び集まるとあって、開始前から写真撮影などで華やいだ。式典では東日本大震災の被災者に対して黙とうをささげた後、学位記に代えて卒業を祝福することを記した「証状」を代表者に授与。その際には湯浅学長が「お帰りなさい」の一声を掛けた。

 「1年前まではこんなことがあるなんて考えていなかった」と岩手県釜石市出身で、昨年の3月11日は地元にいたという卒業生の中村さん。「卒業式に出席したいという気持ちはあったが、中止になってしまったことで、これまでの4年間の大学生活があっけなく終わってしまった気がした」と当時を振り返る。現在は東京で会社員として働いているという中村さん。「こういう機会を設けてくださって、自分の人生の区切りとしても大きな一歩を踏み出すきっかけになったので感謝している」と話す。

 「すごく緊張したが、貴重な経験をさせていただいてうれしい」と現在は静岡県で幼稚園教諭として働き、式典では卒業生を代表して謝辞を述べた鈴木さん。「今は終わってほっとしている」とも。

八王子経済新聞VOTE

「八経」こと八王子経済新聞に期待する記事は?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース