国道20号(甲州街道)沿いのパンの材料や道具を扱う「mix & mix」(八王子市横山町)や日本茶専門店「網代園」(横山町)などで12月31日まで、スマートフォンアプリを使って昔の八王子の風景を拡張現実(AR)で再現するイベント「ハチカム」が行われている。
街中にスマートフォンをかざすことで、昔の八王子の姿を体験できる
11月1日に始まった同イベント。東京造形大学(宇津貫町)造形学部デザイン学科メディアデザイン専攻領域の学生が企画・運営しているもので、八王子織物工業組合(八幡町)のアンテナショップ「ベネック」や仏具店「岡田屋」(八幡町)でも実施している。
参加各店にはARマーカーを設置。「COCOAR2」というアプリでマーカーを読み取り周囲の風景にかざすことで、その場所の昔の風景の写真などのコンテンツが表示されるほか、画面に表示されるキーワードを店のスタッフに伝えることでオリジナルデザインの手拭いを進呈する催しも行っている。
八王子みなみ野駅周辺のイルミネーションや、12月16日に東京ビッグサイトで行われる「東京国際プロジェクションマッピングアワード」などにも参加するなど学生がさまざまな活動を行っている同大。今回は昔の八王子の姿を体験してもらうことで世代間交流のきっかけとなることを目指し、大学コンソーシアム八王子(旭町)が実施している「学生企画事業補助金」制度を活用。同大3年の学生8人がプロジェクトを進めている。
「写真などはたくさん残っているのに市民や八王子を訪れる人には伝わっていない。資料が残っているなら八王子の人に面白く手に取りやすい形にしようとARを使うことを思いついた。バスを待っている待ち時間にスマホで簡単に見てもらうことができたらと思い進めた」とプロジェクトに携わる諸星花織さん。
コンテンツ制作のほか、アプリ開発企業との打ち合わせや、ポスターやリーフレット、手拭いなどのデザイン、手拭いのシルクスクリーン印刷まで学生が手作業で進めたという。特に手拭いについては白い生地をあえてオフホワイトに染色するなどこだわった。「八王子の街を渡り歩いて新しい発見をしていこうという企画なので建物をモチーフにしたデザインにした」と手拭いのデザインを手掛けた加藤みのりさん。同じく手拭いに携わった中野玲さんは「夏休み中に終わらなかったので、10月下旬までかけてずっと刷っていた」と振り返る。
ポスターやリーフレットなどについては、グラフィックデザイン専攻領域に所属している相川裕美さんにも入ってもらい作り上げた。「目を引く美しさが得意な人と、分かりやすさなど情報デザインに得意な人が役割分担した」と諸星さん。デザインに携わった後藤由芽さんは「店に大きなポスターを貼っていただく余裕はないので、どうにかして情報量を削らなければいけないというのが常にあった」。相川さんも「ポスターはA3のサイズの中にどれだけ情報を入れるか、どうしたら目を引くのか考えながら進めた。校正だけで30回以上になった」と話す。
諸星さんは「この4店舗でこのコンテンツが見られるのは今だけ。20年住んでいても、こんな景色があったのかと思わされるものが見られたし、写真を見るだけでは伝わらないスケール感がARだったら感じられるので、皆さんの手のひらで、ぜひ魔法のような体験をしてほしい」と呼び掛ける。
アプリはiOS、Androidに対応。ダウンロード無料。