八王子市は11月22日、台風19号を受け設けた市独自の災害義援金として、これまでに600万円以上が集まったことを明らかにした。
石森孝志八王子市長が記者会見で発表した。10月12日に東海・関東・東北地方などを通過した台風19号では、東京都をはじめ各地で大雨特別警報が発表され、河川の氾濫など甚大な被害をもたらした。
八王子では人的被害はなかったものの全壊10件を含む148件の家屋被害のほか、土砂災害が161件、溢水(いっすい)・越水などが58件、道路冠水が93件など大きな爪あとを残した。現在でも、通学バスが道路崩落のため学校周辺を通れないことから、市立恩方第2小学校(八王子市上恩方町)が市立恩方第1小学校(下恩方町)の校舎を間借りし授業を行うなど影響が出ており、12月2日からは一度、第1小学校に児童を集めた後、マイクロバスを使って送迎することで第2小学校での授業の再開する見込みだという。
今回の災害を受け、市では発災直後に「被災者相談窓口」を設置したり、ボランティアを受け付ける窓口となる「災害ボランティアセンター」を設置したりするなどして対応。今月14日までに約1500人のボランティアが支援活動を行ったという。
市内35カ所には災害義援金を受け付ける募金箱を設置し、振り込み用の口座も開設。今月20日時点で626万3,148円が集まっており、今後は「義援金配分委員会」で配分額を決め、全額を被災者に配分する方針。被災した住宅への応急修理支援や道路や橋などの復旧に当たるため総額21億7,329万円の補正予算を組むことは市長専決処分で決めたという。
八王子にゆかりのある人からの支援も続いており、今月6日には八王子で結成されたロックバンド「TOTALFAT」のボーカル・ベースのShun(しゅん)さんらが木内基容子副市長の元を訪れ、ライブ会場で集めたという義援金を手渡したほか、今月21日には同じく八王子で結成されたバンド「マキシマム ザ ホルモン」が市に対して被災者に向けて電化製品などを寄贈したことを自身のSNSで公表した。
「1カ月あまりが経過したが、日常の生活を取り戻せていない市民もいらっしゃるし、復帰がまだ進んでいない箇所もある。今後も支援や復旧に向けた取り組みを全力で進めていく」と石森市長。「今回の台風19号は過去に経験がない記録的な大雨だった。八王子は土砂災害警戒区域も数多くあり常に警戒しているが、ひどい状況となった。多くの皆さんが温かい善意をくださったことは被災者の皆さんにとってもありがたく感謝されていると思う」と話す。
今春には最新のハザードマップなどが掲載されている「八王子市総合防災ガイドブック」を全戸配布したが、台風が通過した当日は市ホームページへのアクセスが困難になるなど情報発信の面でも課題を残した。市では今後、ホームページだけでなく防災情報メールへの登録の呼び掛けや、NHKのデータ情報を使った周知、緊急エリアメールの活用など、さまざまな対応を検討していくという。
石森市長は「(ガイドブックは)機会があるごとに市民の皆さんに中身をご覧いただき、日頃の備えを徹底していただきたいと話をしてきたが、まだまだ中身をご存じでない方がいる。あらためてガイドブックを市民の皆さん1人1人が手に取り、ご覧いただくような取り組みを進めていきたい」と話し、「大きな災害は準備をしていてもなかなか思うようにいかない。課題も浮上しているので、こういった課題を検証しながら次なる災害へ備えていければ」と意欲を見せる。