工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に拠点を置く「ソーラーチーム」が8月10日、秋田県大潟村で行われたソーラーカーレース「ワールド・グリーン・チャレンジ2021」で準優勝した。
今月9日・10日に大潟村ソーラースポーツライン(秋田県大潟村)で行われた同大会。当初は3日間にわたって開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2日間に日程を短縮。昨年は中止されたため、2年ぶりの開催となった。1周の距離が25キロあるコースを走り、総走行距離を競った。
同チームの参戦は、2018(平成30)年以来3年ぶり。5度目の優勝を懸け、2019年にオーストラリアで行われた世界最大のソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」を走ったソーラーカー「Eagle(イーグル)」を持ち込み、チームの中から選抜した20人が大会に挑んだ。
初日は、時速80キロ以上でコースを走るなどして一時はトップ躍り出る場面もあった。終盤には速度制限区間でのスピード違反を理由に1周マイナスになるなどミスも発生。初日を2位で終えた。
2日目は、台風9号から変わった温帯低気圧の影響による天候悪化を受け、スタート時刻やコースが変更されたほか、時速60キロという速度制限も設定された。12時30分にマーシャルカーが先導する形でレースがスタートしたが、同チームのソーラーカーは当初のコースとは異なる折り返し地点で毎回、曲がりきれず、手助けを受けるなどアクシデントに見舞われた。
同チームのツイッターにはレース中、「コースが変更になり、工学院大学の車両は折り返しで曲がりきれず(中略)方針を楽しむことに変更ー!」「バッテリーがあまり過ぎて、どうしたらいいんだー」(原文ママ)とつぶやかれる場面もあった。レースは前日の順位を保ったまま終了。クラス準優勝となった。総合優勝は、2019年の「BWSC」で準優勝の結果を残した「東海大学ソーラーカーチーム」だった。
多くのメンバーは、ソーラーカーレース初経験で大会に挑んだ。自身もレースは初めてというキャプテンで機械工学専攻修士1年の松田直大さんは、「車体はいいものだが、チームや人としての勝負に多くの課題が見付かった。レース経験がない点が一番の懸念だったが、今回の大会を経験することで大きな一歩を踏み出せた。チームの一人一人がそう感じていると思う」と話す。
「経験値がないことが敗因となった。タイヤのパンクなどマシンの不調はなかったが、エネルギーマネージメントや戦略には問題がある。臨機応変にどう対処するかなどレースでの勝ち方について細かいところを学んだ」と松田さん。「レースは車を走らせるだけじゃないということがこの秋田の大会での一番の学び。メンバー一人一人の体調管理や食事などを含めた全てがレースだということを学べたのもいい経験」とも。同チームは今秋に行われるソーラーカーレース「白浜ECO CAR チャレンジ」にも参戦することにしており、「白浜では、一段と変わり、一皮むけた工学院大学ソーラーチームを見せることができたら。来年、秋田の大会に出られたら今度こそ優勝を狙いたい」と意気込む。
監督で同大機械システム工学科の濱根洋人教授は、今回の結果について「残念」としながらも、「今のチームの状況だとそうかなとも思う」と話す。コロナ禍や台風接近の中での大会だったこともあり、「今までに僕が秋田で経験した中では一番大変だった」と濱根さん。「彼らは全部が初めて。知らないことが多すぎて、なかなか通じない。経験がないことで何をすればいいのかこれだけ分かってもらえないとは思わなかった。基礎が抜けていることが多かった。今まで秋田では叱ったことがなかったが、今回は大きな声で何回叱ったかわからない。一歩一歩だと思う」と振り返る。
「車だけじゃなく、チームを作る必要がある」と濱根さん。「次は白浜だが、1月のアブダビの大会にも参戦を計画している。試合の数を増やしてチームを鍛えることが一番の目標。最終的な目標はオーストラリアで優勝すること。今回は優勝できなくてよかったとも思う」と話す。