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東京都立大学で植物学者・牧野富太郎企画展 実物標本など170点展示

展示の様子

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 企画展「『日本の植物分類学の父』牧野富太郎が遺(のこ)したもの」が7月15日、東京都立大学南大沢キャンパス(八王子市南大沢)で始まった。会場は牧野標本館別館内「TMUギャラリー」。

牧野博士は青果店から買ったとする野菜も標本にしていた

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 今回は現在放送中のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルで、 「日本の植物分類学の父」とも呼ばれる植物学者の牧野富太郎に焦点を当て、同大が収蔵する牧野博士の標本などを展示する。

 展示は過去、現在、未来と順を追って構成する。牧野博士の年表などを紹介する「過去から引き継ぐ」、牧野博士が手がけたものに加え、当時、雑誌で懸賞をかけ一般から集めたという植物標本などを飾る「牧野富太郎が遺したもの」のほか、「植物標本の価値」「植物標本の現在」「未来につなぐ」「NHK『らんまん』」の6つのコーナーを展開する。「NHK『らんまん』」のコーナーでは、作中で実際に使われた標本などを展示する。

 総展示数は約170。約60点の実物標本のうち約20点、約60枚の画像標本のうち約40枚は牧野博士が手がけたものだという。実物標本については保護のため数週間ごとに展示品を入れ替える予定。

 生涯を通して40万枚もの植物標本を残したという牧野博士。練馬の自宅にあった標本が十分な管理もされず放置されていたことから、都は牧野博士の遺族から寄贈を受け、1958(昭和33)年、同大に「牧野標本館」を設置した。1991(平成3)年のキャンパス移転に伴い、同館も八王子に移転。2018(平成30)年には別館も設けた。現在は標本のデジタル化などの作業を進めている。

 企画を手がけた同大理学部の加藤英寿助教は、展示品について「今回のテーマが伝わるものを選んだ。これまで注目されてないものも紹介したいと思い、有名なものの中には展示を避けたものもある」と話す。

 同展の開催に合わせ、研究や教育活動を目的に寄付を募る「牧野標本館基金」を立ち上げた。同大が個別のプロジェクトの支援を目的とした基金を立ち上げるのは今回が初めて。寄附額は自由だが会期中、2,000円以上の寄付をした人にはオリジナルクリアファイル、10万円以上寄付した人にはギャラリートークや通常非公開の標本庫ツアー、オリジナル標本作りなどの特典を用意する。同展終了後も基金は活動を続ける。

 加藤さんは赴任した1998(平成10)年から標本のデジタル化を進めてきたという。「1日にスキャンできるのは多くて60枚。これをずっと続けていては何十年たっても終わらない。デジタルカメラの性能も良くなったので、カメラで撮影する形にすれば1日平均数百枚はデジタル化できる。ただ、この仕組みをそろえるには最低100万円はかかる。装置を設置して、スピードアップを図り、5年の間に標本全てをデジタル化したい」と話す。

 「一体どういう標本があるのか把握できていないという情けない状態を早く脱却したいし、お宝が眠っている可能性もある。デジタル化して公開していけば、私たちの気づかないところで標本の価値に気づいてもらえ、新たな標本の価値を生み出すことにもつながる」とも。

 一般公開前日の今月14日に行われた内覧会には「牧野マニア」を自称し、3月には著書「われらの牧野富太郎!」(毎日新聞出版)を刊行、ドラマ「らんまん」にも里中芳生役で出演しているマルチクリエーターのいとうせいこうさんが来場した。

 いとうさんは牧野博士を「学者でオタクだったからこそ打ち立てた自分の業績がある人。植物のことだけ考えて暮らし生きた人なので、家族は大変だったと思うが尊敬もするし愛らしい人だと思う」と紹介した。牧野博士が困窮(こんきゅう)した際には新聞が金を募る協力をしたことを引き合いに出し、「公共の場で学者が愛されていた時代があったことが非常に大事。今も日本の学問を支えているのは学者。一般の人たちが一緒に支えていく形を復活させるためには牧野さんの例は非常に重要だと思う。朝ドラになったことは日本の学問にとっても重要」とも。

 「この標本館は面白いものをいっぱい持っている。なにせ標本は地味なものと思われているので、この面白さがなかなか伝わらないような気がしている。これを機に面白さを感覚的に捉えてくれる人がいっぱい来てくれたらいい。朝ドラで牧野さんを面白いと思った人にとって、その人が自分の手で作ったものがどういうものかを感じられる唯一の方法が標本を見るということ。牧野たちの絵を見に行くような気持ちで1回見てほしい。びっくりすると思う」といとうさん。

 開催時間は10時~17時。日曜・9月23日を除く祝日と8月12日、同月25日~9月3日は休館。9月30日まで。入場無料。

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