
八王子市と西東京バス(八王子市明神町3)が7月9日、高尾駅北口周辺で12月から自動運転バスの通年運行を始めるための事業に着手したと発表した。
両者は地域公共交通の維持・確保を目的に、6月に「自動運転社会実装推進事業コンソーシアム」を立ち上げた。その上で、国土交通省に「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」の交付を申請。今回、補助金の交付が決まったことから、7月9日に国や警視庁なども参加する「八王子市レベル4モビリティ・地域コミッティ」を立ち上げ、八王子市内で自動運転バスの社会実装に取り組むことにした。
今回の発表に先駆け、東京都は今月8日、八王子・高尾地区で自動運転バスの実証実験を8月23日から行うと発表した。運行事業者は西東京バスで、自動運転のレベルは運転手が搭乗する「レベル2」。高尾駅北口~高尾台住宅間の「住01」系統を基にしたコースで、期間中、同社は小型EV(電気自動車)路線バスを借り運行する。実施期間は8月31日まで。
都主体の実証実験の後、西東京バスは実験で用いるものと同等の小型EV路線バスを購入する。国への認可申請などの手続きを行った上で、今冬にも自動運転バスの通年運行を始めることを目指す。実現すれば都内26市で初の取り組みとなる。運行路線は実験と同じ「住01」系統を元にしたコースで、片道約2.6キロ。自動運転時の最大時速は40キロ。当初は「レベル2」で運行し、今後は遠隔監視の上、システムによって運行し運転手などは搭乗しない「レベル4」での運用を目指す。
本年度、自動運転バスの運行への取り組みを表明していた初宿和夫八王子市長は「背景には2024年問題に伴う運転手不足の問題がある。市内では前年と比較して1日あたり330便も減便され、市民には公共交通の利用に不便をかけている。運転手不足であるならば技術を使って社会サービスを維持していこうとなった。その一つとしてバスの自動運転にチャレンジする」と話す。
「実証実験のための路線ではなく、既存のバス路線に組み込むという、まさに社会実装としてのバスの自動運転化が八王子市で行われることに大きな意味がある。これが何を意味するかといえば、八王子市の中で路線バスの自動運転化が普通になっていくということ。その第一歩になる。今後は八王子を社会課題の解決のフィールドとして使ってもらい、大学など教育研究機関にもバスの自動運転を実装してもらいたい。なんとか本年度には次の話ができるように持っていきたい」とも。
西東京バスの高木保社長は「東京の西部地区は昭和40年代から50年代にかけて大規模な住宅開発が行われた。今は高齢化が進み空き家などの社会問題が出てきている。今回の路線は地形的に上り坂で、住民の方は公共交通機関がないと駅に行くことができない。短い距離の路線でもあるので、実験をするには適した路線だと思った。自動運転バスの運行でどういう効果があるのか、まずは8月の実験でデータを集め検証し、通年運行の開始に結びつけていきたい」と話す。
「乗務員が不足している上、将来の少子高齢化もあり、私たちとしては今取り組まなければいけない。将来に向けて種をまくという視点でチャレンジしたい。今、住まわれている方だけでなく、空き家になっているところに若い世代の人たちが入ってきてほしいという思いもある」とも。