創価大学(八王子市丹木町1)で5月18日、同大学が開発した人工衛星を載せた宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH2Aロケットが打ち上げられることを受け、パブリックビューイングが開催されたものの、発射4分前に「打ち上げ延期」になるハプニングが起きた。
同ロケットではJAXAが開発した金星探査衛星「あかつき」や太陽電池で動く宇宙帆船「イカロス」などとともに、その余剰スペースを使って早稲田大学、鹿児島大学などが開発した5機の人工衛星が打ち上げられる予定。その中には同大が開発を進めていた超小型人工衛星「Negai☆″(ねがい)」も含まれている。
パブリックビューイングは打ち上げ予定時間の6時44分に合わせて、6時から開催。教室に約170人の学生などが集まり、現地からの中継映像を見ながら、その様子を見守っていたが、「天候不良」を理由に6時40分、打ち上げ延期が発表された。「残念だと思いながらも、次回の成功に向けての試練だととらえ、一層『必ず成功してもらいたい』との思いが強くなったようだ」と同大学広報部広報課の高橋さん。
「プロジェクトは2003年ごろから始まった」と話すのは、開発を進めた同大学工学部情報システム工学科の黒木聖司教授。開発した衛星は「CubeSat(キューブサット)」と呼ばれる1 辺10センチ、重さ1キロ以下の超小型衛星。衛星の設計と組み立てはすべて学生が行った。「この規模の大学の学生が自ら衛星を開発するのは世界でも例がない」という。
昨年7月にJAXAがロケットへの「相乗り」を決定し、打ち上げに向けて開発を進めていたが、今年2月には学生が打ち上げ機を破損させるトラブルが発生。「創価大学だけ八王子に帰るように指示され、『JAXAの許可なくねじ1本動かしてはいけない』と厳命を受けた」と黒木教授。JAXAが補修案の提出に与えた時間は2日間。休日返上でアイデアを出し合った。「後でJAXAの担当者から、『本当に補修案が出てきたので、責任者はただびっくりしていた』と聞いた」。さまざまなトラブルを乗り越えながら、4月16日にJAXAに衛星を納入。今回の打ち上げを待った。
「人工衛星は一度打ち上げると故障が起きても修理できない『非修理系』なので、どんなに信頼度を高く作っても、ほんのちょっとした不具合で全損する」と黒木教授。納入前には壮行会を開き、「『頑張ってね』という願いの気持ちを全員で込める意味で、衛星に向かってウーロン茶で乾杯した」という。
JAXAは19日、スケジュールを再設定し、21日6時58分22秒に打ち上げると発表。同大学では、これに合わせ21日6時20分から同大学工学部棟E207教室で再度パブリックビューイングを行う。
打ち上げ後は内部の構成を変えることができる大規模集積回路「FPGA」を使った情報処理システムの検証や地球の画像の撮影などのミッションを実施。子どもたちから集め、マイクロフィルム化した約8,000の夢が宇宙を飛ぶ「流れ星☆″に願いを」と称するミッションも行われる。衛星は地上300キロ上空を20日間周回した後、大気圏へと突入し燃え尽きる予定。