日野自動車(日野市日野台3)は1月20日、同社本社に隣接する生産拠点「日野・本社工場」を2020年をめどに閉鎖し、工場機能を茨城県古河市に移転すると発表した。
同社は1910(明治43)年に「東京瓦斯工業」の名称で創業。現在はトヨタ自動車と提携関係を結び、主としてトラックやバスなどの商用車を手がける。同工場は「日野重工業」として分離独立した1942(昭和17)年に稼動を開始。中型クラスのトラック「レンジャー」や大型トラック「プロフィア」などを生産する。
計画は今月20日に同社が行った「新春記者会見・アナリスト会社説明会」の場で発表。同工場は69年にわたって稼働を続けているが、周辺地域が住宅地域として開発されたため工場の拡張や夜間操業の面で問題があった。
移転に関して、「環境問題とスペースの問題が大きい」と白井芳夫社長。「騒音や振動を考えても住宅地が迫る中、あの場所で物を作り続けることが日野市の皆さんにとって良いことなのかどうかを考えた」
今回は本社敷地約43万平方メートルのうち、工場部分の約30万平方メートルを古河市に設ける新拠点に移転。本社機能は日野市に残す。「新しい車作りや、生産をやめずに新しい生産システムに切り替えるためには新しい場所でやる必要がある」と白井社長。移転後の跡地については、「街づくりにとってあの場所がどう貢献できるかも含めて、多摩地区にとっての最適解を日野市とともにゆっくり考えていく」と述べ、閉鎖する2020年までに検討するとした。
関係する約2,300人の雇用は配置転換などで維持。「国内での仕事量は減らないので人員削減は考えていない。通えない距離ではないが、単身赴任になるのかは相談になる」と話す。
新拠点の土地は2009年1月に予約し、昨年12月に購入を決めた。取得金額は59億7,000万円。敷地面積は約66万平方メートルと同工場の2倍強で、同社は新拠点を「具現化したものづくり技術を世界に展開するマザー工場」と位置付ける。
同社によると、2006年には海外向けの生産が国内向けを逆転。昨年10月時点で、国内で生産した部品を輸出し現地で組立・販売する「ノックダウン生産」の比率が69%まで上昇しており、まずは来年春の稼働を目指して同工場の「ノックダウン工場」を新拠点へ優先的に移転させる。コア部品など製造ラインも段階的に移転し、2020年までには車両の組立も移転させる方針。
同工場がある日野市とは「こまめに連絡を取っている」と同社の山本章正専務。「昨年末に移転の連絡は済ませている。市の税収などについてまでは計算していないが、法人税などにはほぼ影響はないと思う」とも。