菊池製作所、手の震えを抑える器具開発-展示会などで話題に

菊池製作所が開発を進める「振戦用装着具」の手首タイプ

菊池製作所が開発を進める「振戦用装着具」の手首タイプ

  • 0

  • List
  •  

 試作品製作などを手掛ける菊池製作所(八王子市美山町)は現在、不随意運動である手の振戦(しんせん)を抑える装着具の開発を進めている。

試用する井口さん

[広告]

 同社は1970(昭和45)年創業。市内の美山工業団地に本社を展開し、デジタルカメラや携帯電話など製品の試作品を手掛けるメーカーとして知られる。10月28日には「ジャスダック」に上場を果たした。

 振戦は筋肉の収縮と弛緩(しかん)が繰り返されることで起こる震え。不随意運動のため自分でコントロールできない。原因不明で自然に震えてしまう本態性振戦では、手が震えて字が書きづらくなるほか、コップの水をこぼすなど生活に支障が出ることがある。

 今回は本態性振戦による手の震えから生活をサポートしようと、産学連携や研究成果移転、特許化支援などを行っているタマティーエルオー(旭町)が仲介し、早稲田大学や横浜市リハビリテーション事業団などと共同で研究。昨年度、経済産業省の「地域イノベーション創出研究開発事業」にも採択された。

 同社では、ものづくりメカトロ研究所顧問の井口竹喜さんを中心に展開。井口さんは長年、コニカ(現在のコニカミノルタホールディングス)でコンパクトカメラなどのデザインを担当した工業デザイナー。「ビッグミニ」などの製品を送り出したほか、笑顔を元に撮影を行う「スマイルシャッター」の原理を開発したことでも知られる。

 2008年にコニカミノルタを定年退社後、「やりたいことがいっぱいあると菊池社長に相談したら、『それ全部うちでできる』と言われて、これは面白い」と同社に入社。人間が感じる印象など感性を生かすための開発を進める。「絵を描くよりも作ってしまえとやっていたら、こんなことになってしまった」と井口さん。

 同プロジェクトでメーンに開発しているのは、二の腕から手先までをカバーする「食事用前腕タイプ」。肘の部分にモーターをつけ、筋肉の動きをセンサーでとらえて肘の曲げ伸ばし運動をサポート。腕や手首に絡むよう器具を製作する中では自社のパイプを曲げる機材や技術などを活用した。このほかにも、「字が書けない」という患者の声を生かして、手首部分だけの「手首タイプ」の開発も進めている。

 10月から11月にかけては、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた「国際福祉機器展」「産業交流展」「国際ロボット展」に連続で出展。特に「手首タイプ」はピンク、イエロー、グリーン、ブルーとカラフルなカラーリングでサンプルを作ったこともあり、「展示会ではこちらに注目が集まってしまった」と井口さん。

 「試作メーカーのスタンスを保ちながら続けていくことが大事」と井口さん。「発想に限界なんてない。今後も実用化に向けた研究をさらに進めていく」と意気込む。

八王子経済新聞VOTE

「八経」こと八王子経済新聞に期待する記事は?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース