八王子在住の写真家・三井昌志さんは10月26日、パロル舎(文京区)から写真集「この星のはたらきもの」を出版した。
三井さんは京都出身の写真家。機械メーカーに勤務後、2001年から10カ月にわたってベトナム、カンボジア、タイなどのユーラシア各国を放浪し、 2003年にはその模様をつづったフォトエッセー「アジアの瞳」(スリーエーネットワーク)を発売。昨年10月には各国の人々の笑顔を収めた「スマイルプラネット」(パロル舎)を出版している。
「これまで8年あまりにわたり、アジアの人々を撮り続けてきた」と三井さん。「最初は子どもたちの笑顔や美少女の姿に引きつけられ、夢中になって撮っていた。それが最近になって、興味を引かれる被写体が変わってきた」という。「もちろん子どもは今でも撮るが、それ以上に『働く人』に魅力を感じるようになった」。
アジアの中では生活に困窮し、過酷な肉体労働にいそしむ人が数多くいる。しかし、「みんなとてもいい顔をして働いている。そのことに心が動かされた」と三井さん。「そうやって懸命に体を使って働いている人々には、『今を生きる』ことの強さやたくましさが宿っている」という。今回の写真集ではそうした「働く人」たちの姿を集めた。
インド、ネパール、ミャンマー、ベトナム、東ティモール、バングラデシュなどを巡った。中でも、バングラデシュの精米所を訪ねた際のことが思い出に残っているという。「写真を見ればわかるが、博物館入りがふさわしいような、恐ろしく旧式の機械を使って精米している。工場内は電気もついておらず、小さな窓から差し込む光の中で女たちがカゴに入れた米を黙々と運んでいる。その姿はまるで古い絵のようで、ここが21世紀だなんて思えなかった」と三井さん。「この神秘的な1枚が撮れたとき、『ずっと働く人を追いかけてきて良かった』と思えた」。
「この本を『働くことに何の意味があるんだろう?』と悩んでいる人に読んでもらいたい」という。「この世界にはさまざまな仕事があって、それは必ずしも楽じゃない。けれど、それぞれの仕事には固有の意味があり、価値がある。そのことを感じてもらえたら」。
仕様はB5判変型、96ページ。価格は2,000円。