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医療を中心とした街作りを目指す-北原脳神経外科病院理事長・北原茂実さん

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■ニーズがあるものは全部やる

-今回、ビルにクリニックを展開することになったのはどういった考えから?
北原 「八王子の医療供給体制を根本から考え直そうと思っています。クリニックにはMRIやマルチスライスCT、内視鏡や何からすべての設備が入っている。大学も含め医者が少なくなり、診療体制も萎縮してきている中で24時間365日全科診療を提供することを目的としています」

-コンセプトはなんでしょうか?
北原 「疾患そのものだけでなく、社会や環境を含めた生活それ自体をサポートしていくことをテーマに据えています。設備としてはベッドがない以外は大学病院と同じだから何でもやることができる。ただ、できることがやることではないので、どのようなことをやってほしいかというニーズを患者から集めて、ニーズがあることについてはすべてやっていきたいと思っています」

-どのようなニーズがありますか?
北原 「オープン前の内覧会には2,000人が来られました。一番ニーズが多かったのは小児科。小児のアレルギーや循環器といった専門外来などについての問い合わせもありました。基本的には『どんな病気であってもここに来れば助かる』という形にしていきます」

-来春から始めるという「ワンコインドッグ」とは?
山崎 「ワンコインといっても金額が決まった検査セットではなく、人間ドッグのようなものとも違うものになるので、名称として正しいか難しいのですが…。金額としては、さまざまなバリエーションがあって500円から10万円くらいまで考えられます。どのような検査を選ぶかは個人の自由。ちょっと調子が悪いときは低額の検査で簡単に調べて、今後のがんの発症などについては高額にはなるものの、大学と連携して最先端の遺伝子検査をする。無駄な検査を減らし、ライフステージにあった医療を提供するきっかけになると思います」

■医療が変わることで、八王子も変わる

-現在の病院も変わると聞きましたが?
北原 「名称を『北原国際病院』と変え、他の診療科も始めます。今後はがんセンター等も開設し、クリニックとの相乗効果も図っていく。国際という名称にするのは、どのような言語の人であっても利用できる病院を目指すから。海外から日本に来ている人にはエリートも多いし、そのような人たちが八王子に集まるようになれば街の活性化にもつながっていくはずです」

‐農場経営にも参画を参加しているとか。
北原 「医療は総合生活産業。今まで病院は診察して、薬を出し手術をしたらそれで終わっていましたが、その前や後も考える必要があります。牧場があれば患者の就労支援だってできるし、アニマルセラピーのようなこともできる。生き甲斐が与えられれば、病気そのものの発症も防げるかもしれない。クリニックで引きこもりを始めとした無料相談を始めるのも、そのような生活全体のサポートを考えてのことです」

-カンボジアで医科大学や病院の設置を進めていると聞きました。
北原 「カンボジアには医師法がないため、ミャンマーやラオス、ベトナムなど東南アジアの他国の医療スタッフでも動くことができます。さまざまな国の人がいる中で技術を学ぶことができることは大きい。また、彼らには八王子のクリニックでも研修を積んでもらい、医療の考え方を身に付けてもらいます。この中で本当の意味での病院の国際化が図れ、八王子にさまざまな国の人に対応できる病院ができ上がる。彼らはその国のエリート。彼らを通して各国と八王子の中小企業が結びつくパイプだってできるかもしれない。八王子と東南アジアを直接結びつけることだって不可能ではなくなると思います」

-医療から八王子そのものが変わる?
北原 「八王子がこれから考えていかなければならないのは『医療立国』という考え方。昨年多摩地域で倒産した企業の半分が八王子だったほど、街はある意味衰退していっています。八王子では産業として、これから医療と教育が重要になってくる。『医療と教育の国際都市』をキャッチフレーズに何とかしていきたいと考えています」

-目指すものはなんですか?
北原 「医療を中心とした街作り。八王子は人口でいえば全国で22番目。19番目までは既に政令指定都市になっていますが、できれば八王子も政令指定都市にしたいと考えています。ただ、合併によって規模を大きくするのではなくて、八王子を理想的な環境にすることで人を集めたい。20以上の大学があって学生だけで10万人以上いるのに、住民登録すらしていない人が多いのです。それは彼らにとって八王子がまだ魅力的ではないから。医療はそのようなことを考えるとき根幹にあるし、この考えが八王子で成功すれば全国でも成功する可能性があります。そのリーダーシップを取っていきたい」

-そのようなことを現場からやることにしたのはなぜですか?
北原 「魅力がないところには人が来ないことは当たり前なのに、結果を見ないと納得しない人たちが多いのです。政治家になったってだめ。医療崩壊だなんだと文句を言っているくらいなら自分たちでやって、結果を見せればそれは日本中に広がります。八王子が理想的な街になれば、そこから全国が変わる。それを実現したいと思っています」

-ありがとうございました

【取材後記】

 「再開発ビルの存在というのは、外国人も含めた多くの人が集まることで意味を持ってくる。だから、入りたかった」と北原さん。城を中心とした江戸時代の街作りのように、医療を中心とした街作りも八王子にとどまらず、日本そのものを変える可能性を秘めているかもしれない。

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