風声舎(新宿区)は6月1日、八王子の花柳界をテーマとした本「芸者衆に花束を。 八王子花柳界、復活」を発刊する。
「花柳界入門 夫婦で行く花街」(小学館)や「お座敷遊び~浅草花街 芸者の粋をどう愉(たの)しむか~」(光文社)などの著作を持つ浅原須美さんが手掛けた同作。10年にわたって八王子に足を運び、インタビュー取材などを行ってきた浅原さんが「八王子花柳界はなぜ復活できたのか」をテーマに芸妓(げいぎ)衆の今昔などをまとめたドキュメント作品となっている。
芸妓だけでなく、石森孝志八王子市長をはじめとした行政や地元経済界なども取材。32ページにもなるカラーページでは、地元で活動するカメラマンの鈴木竜馬さんによる撮り下ろし写真なども掲載した。「芸妓衆がイベントなどで街に溶け込んでいる様子や若い芸妓が増えていることは写真が一番伝わると思ったし、旦那衆などの姿も紹介したかった」と浅原さん。そのほか、花街マップやイベントカレンダー、座敷遊びの方法など実践的な内容についても紹介する。
20年にわたり全国で約50カ所の花街を取材してきた浅原さん。今回は多摩地区に唯一残る八王子の花柳界に注目。今月19日・20日に市の文化施設「いちょうホール」(八王子市本町)で行われた「八王子をどり」の開催に合わせて刊行することを目指し、昨春から1年がかりで本をまとめ上げた。
「同じ多摩に住んでいることもあり、何となく親近感があった。イベントや行事がある度に足を運んでいたら、来る度に新しいことがあった。前々からまとめたいとは思っていたのだが、ここ2、3年は八王子の芸妓がドラマの題材になるなど全国的に知名度が上がってきたこともあり、ちょうどいいタイミングではないかと思った」と浅原さん。「今までは市民でも意外と芸妓について知らなかった人が多かったが、街での認知度も上がってきたのが感じられる。しかし、本としてまとまったものがなかったし、芸妓衆の役に立ちたいというあふれる思いもあり本を書こうと思った」とも。
今まで手掛けてきた本の中で最も難産だったという今作。「妥協せず、校了の前日までできることはできる限りやった。(本が完成し)じわじわと感動が押し寄せている。ここまでの情熱を懸けられる対象に出会えたことが幸せ」と話す。
織物業と花柳界の発展が密接に関連していたことなど地元との関係が強いことが八王子の花柳界の特徴とみる浅原さん。「今ここまで復活できたのは昔からの土壌があったから。これからの八王子の花柳界もその流れがあって発展していくのだと思う。本を通して歴史がつながっていることを知っていただければ」とアピールする。
A5判、168ページ。価格は1,500円(税別)。