精密微細加工などを手掛ける「ナラハラオートテクニカル」(八王子市楢原町)が3月24日、設計にAI(人工知能)を活用した名刺入れ「ジェネレイティブデザインカードケース」の販売を始めた。
本業の傍ら、自社ブランド「『NA』design」を展開している同社。これまでシルバーカーボンを採用した名刺入れ「CFRP CARD CASE」や、プリント基板を採用したiPhoneケースなどのオリジナル商品を手掛けてきた。今回はデザイナーやエンジニアとコンピューターが共同で開発する「ジェネレーティブデザイン」を採用した商品として、名刺入れを作り上げた。
設計に当たっては、指定した条件をソフトウエアに入力。出力された設計図を基に、人の手で加工しやすいよう工夫したり、見た目を美しくしたりと修正をかけた。大きさは縦=7.5センチ、横=11.5センチ、幅=1.45センチ。さまざまな力に耐えられるようアルミに穴を開けた構造で、71グラムという軽さを実現した。
商品開発にジェネレーティブデザインを導入しようと思ったきっかけについて、社長の内野真治さんは「会社で採用しているソフトを使って、自ら加工品のサンプルを作って情報発信をする中で、これは新しいと思った」と振り返る。
実際に活用を始めたのは昨夏から。「思い通りにはいかなくて、どうにも使えず、面白くないものができてしまう。出てきた設計図を見て気持ちが悪いとも思ったが、ただ、非常に機能的。そのテイストを商品に取り入れられないかと試行錯誤した」と内野さん。
同社で「『NA』design」の商品開発を手掛ける阪本滋さんも、最初に出来上がった設計図を見た際、「このままでは商品にはならない」と思ったという。そこで、「見た目が有機的で商品になりそうなデザインを選び、刃物が入りやすいように調整するなど細工した」と振り返る。
今回のデザインについては、「こんなものは見たことがないというところが決め手。受け入れられるかどうかは分からないし、ジェネレーティブデザインの知名度もまだまだだが、会社のPRの一つとしても捉えていて、発信力はあると思っている」と内野さん。「名刺交換は初対面で必ずすること。相手がこれを持っていたら、『面白い名刺入れを持っていますね』となる。初対面の人と数分でも仕事とは関係がない話ができれば、仕事の話もスムーズにできるようになるのでは」とも。
ジェネレーティブデザインを使った商品開発は今後も進めていく予定で、「機能性のある文具は面白いかも」と内野さん。「相手に『なんですかそれは』とインパクトを与えられるようなプロダクトをどんどん発信していきたい」と意気込む。
受注生産商品で、注文は同社サイトで受け付けている。価格は3万5,000円(税別)。