初宿(しやけ)和夫八王子市長が1月29日、市長として初めて八王子市役所に登庁し記者会見を行った。
初宿市長は、1964(昭和39)年生まれ。高校卒業後、防衛庁に入庁。その後、東京都立大学事務局の職員として東京都に入庁した。2013(平成25)年~2015(平成27)年は調布市の副市長に就いた。都人事委員会事務局長を経て、昨年、退職。1月21日に行われた八王子市長選挙で、6万3838票を得て当選し今月29日に第32代八王子市長に就任した。
会見冒頭、初宿市長はその場で起立し、「八王子市長に就任しました初宿和夫です。これからの八王子市民のためにしっかり働いていくので、どうぞよろしくお願いします」とあいさつした。
就任後、市職員に「市民の最後のとりでになるように」と訓示したという初宿市長。「市民が相談に来たときに、『これはうちの話ではない』と言ってしまうと行き場がなくなることがある。市民の相談にはきちんと対応してほしいと心構えとして話した。市民に寄り添って相談を受け、共に解決策を考えていく姿勢が大事。『売り手良し・買い手良し・世間良し』の『三方良し』を大事にしているが、八王子市民のためになる仕事かどうかという『世間良し』を特に大事にして仕事をしてほしい」と説明した。
都職員だったことから、「市職員が置かれている状況も理解できる。選挙を経た元公務員である私がいかに市民のためのサービスにつなげていくかが問われると思う」とも。
今後のまちづくりについて、「八王子が東京、そして、日本のリーディングシティーとなることを目指したい。八王子の魅力はたくさんある。八王子の伝統文化に磨きをかけて魅力あふれるものにしていきたいし、地域経済界と連携を取って産業振興をしたい」と初宿市長。
「リニア中央新幹線」の駅が神奈川県相模原市に設けられるのを受けた広域連携などに加え、「高尾山はにぎわっているが、その地域だけでのにぎわいになっている。山に訪れた人が八王子市内を回遊することで、八王子の魅力に気づき、にぎわいにつなげられれば」と話す。
石森孝志前市長が退任時の記者会見で、「初宿カラーを全面に出してほしい」と発破をかけたのを踏まえて、多摩ニュータウンの再整備を含めた地域の魅力向上を引き合いに出し、「私は多摩ニュータウンに住み、八王子ニュータウンにも住んでいた。両方のニュータウンに住んだ市長はおそらくいなかったと思う。ニュータウンに対する取り組みは『初宿カラー』として出てくると思う」と初宿市長。
都有地にある三井アウトレットパーク多摩南大沢(八王子市南大沢)が、2025年に都との定期借地契約が終了することから、「『団塊の世代』が後期高齢者になる社会的インパクトとは別の『2025年問題』が八王子にはある。定期借地契約が切れた後、にぎわいが一時でも消えることがないような取り組みを都にしてもらえるようパイプ役の役割を果たしていかなければいけない」と話す。
都福祉保健局健康危機管理担当局長時代の2020年、新型コロナウイルス感染症などに対応するため設けられた「東京感染症対策センター(東京iCDC)」のトップを務めた初宿市長。学び・交流・防災の3つの機能を備えた施設と位置付ける「八王子駅南口集いの拠点」の整備の話から、「コロナの担当局長だった経験から、これから防災機能を持たせるためには感染症への対応も加えていく必要がある。災害に対する医療をどうしていくべきかも八王子の色を出していける部分。八王子は保健所を単体で持っているので自分のところでできる。八王子を医療のリーディングシティーとして打ち出せる可能性はあると感じている」と話す。
「私の根底にあるのは学びたいということ。知らないことが多すぎて、それに対して謙虚でいたい。知りたいことがたくさんある。東京都の課長になり、自分の時間をマネジメントできるようになってから放送大学に入り隙間時間を使って学んだ。市長としても知らないことに謙虚でありたい。私がコロナの担当局長だった時、私には医療の知識や経験はないが、支えてくれた感染症のドクターや大学の先生、医師会、薬剤師会、東京消防庁、保健所など数多の方の支えがあって業務ができた。私以上に職員、市民の皆さんは専門的な知見を持っている。そういった方々の話を聞き、吸収して市政運営を担っていきたい」と意気込む。