八王子市内で発見され新種のゾウと認定された「ハチオウジゾウ」の化石が3月28日、発見者の相場博明さんから八王子市に寄贈された。
化石は2001(平成13)年12月、当時、八王子市立元八王子中学校の教諭だった相場さんらが八王子市楢原町の北浅川河川敷で地質調査を行った際に発見した。その後の発掘調査を経て、2010(平成22)年に英国の古生物学会誌「Palaeontology」に論文が掲載され、日本では半世紀ぶりとなるゾウの新種として認定された。学名は「Stegodon protoaurorae(ステゴドン・プロトオーロラエ)」。発見された化石は約230万年前の物と推定されている。
八王子市は、2017(平成29)年、市制100周年記念事業として、「コニカミノルタサイエンスドーム」(八王子市こども科学館、八王子市大横町)の大規模リニューアルを行った際、「ハチオウジゾウ」の想像復元図や牙などのレプリカの展示コーナーを新設。同年に発行した「新八王子市史」でも化石発見の経緯や学術的な意義などについて紹介した。
これまで化石は相場さんが勤務する慶應義塾幼稚舎の「サイエンスミュージアム」(渋谷区)で保管・展示していたが、相場さんが3月に定年退職したのを受け、八王子市に寄贈した。当日は相場さんから初宿和夫八王子市長に目録、初宿市長から相場さんに寄付受領書が手渡された。
今後、化石は八王子市が歴史資料として所有し、八王子市教育委員会が管理する。市は2026年10月の開業を目指して、八王子医療刑務所跡で整備が進む「八王子駅南口集いの拠点」の「歴史・郷土ミュージアム」で保管・展示することにしている。
相場さんは「ほぼ1頭分のゾウの化石を発掘することができた。その当時から新種の可能性があると思っていた。9年かけて論文にし国際的に新種として正式に認められた。陸上の大型動物はめったに化石にならないのに体がほぼそろっているし、新種でもある。ハチオウジゾウの化石は古く、この時代のゾウの化石はほかで見つかっていない。古生物学的にも日本でのゾウの進化の謎をひも解く上で非常に貴重な資料」と説明する。
新種の化石は個人所有ではなく、公的な博物館で保存されるべきという相場さん。「将来的には八王子に寄贈して展示されるのがよいと思っていたので、ほかの博物館には寄贈しなかった。退職するまでは自分で管理できるので、慶應義塾幼稚舎で保管してもらった。定年退職のタイミングで、八王子市が新しい博物館を建てるという話を聞き、それならばと寄付したいと申し出た。念願がやっとかなった。ハチオウジゾウもこれでふるさとに帰ることができた。八王子市民に愛される展示をしてもらえたら」と相場さん。
初宿市長は「八王子らしさを象徴する歴史的資料。『集いの拠点』の中の『歴史・郷土ミュージアム』で市民の皆さんの新しい宝として末永く保存・展示・活用していく」と話す。