肌着専門店「イツミヤ」(八王子市八幡町)店主の中野智行さんが7月1日、人工知能(AI)を活用して楽曲や映像を制作したミュージックビデオ「OBSESSION ~執着~」をユーチューブに公開した。
ミュージックビデオに登場するシーンの元になった八王子駅前の風景
中野さんは、2018(平成30)年、「架空の街・八王子国の情報番組」をコンセプトにユーチューブチャンネルを開設。地元商店会の会長も務めながら、地域活性化を目指しユーチューブへ動画投稿を行ってきた。地元飲食店で食事をする動画を公開したところ大きな話題を呼び、「ご当地ユーチューバー」として知られるようになった。
2年ぶりの作品となった今回の動画は約4分間のミュージックビデオで、「八王子を舞台にした恋の歌」をコンセプトに中野さんが歌詞を書き、その歌詞を基に、AIを使った楽曲生成サービス「Suno(スーノ)」を使って楽曲を制作した。
楽曲制作と並行して、AIを使った画像生成サービス「Midjourney(ミッドジャーニー)」や動画生成サービス「Kling(クリング)」で画像や動画を制作した。中野さん自ら絵コンテを考え、八王子の街中などでポーズを取り撮影した写真や動画から数百の映像素材をAIで作成。楽曲と組み合わせることで、1本のミュージックビデオに仕上げた。完成までには半年以上の時間がかかったという。
中野さんは7月8日、SNSを通じ、「見慣れた八王子の風景を舞台に、少し違う夜の物語としてMVに仕立てました」(原文ママ)と投稿。8月10日現在、動画の視聴回数は約7500回、約190件のコメントが寄せられている。
「飲食店のリポートとは違うことがしたくなり、さまざまなAIを使って遊んでいる中で、八王子をテーマにしたミュージックビデオの制作に踏み切った」と中野さん。AI任せは面白くないと設定から自分で作ることにしたが、イメージ通りの楽曲や映像を生成させることには苦労したという。
中野さんは楽曲制作について、「Sunoで作った曲からボーカルだけを抽出し、編集ソフトで切り貼りし再構成することで、メロディーラインを作るという作業を延々と行った。生成した回数は2000回にはなると思う。90年代から2000年代にかけてのJ-POPや歌謡曲の雰囲気を出したかったので、いったん、演歌を作り、そこから、ブラックミュージックやポップスに寄せていく作業を行った。映像に合うドラマチックな展開をする楽曲ができた」と自信を見せる。
映像制作については、「AIには身体も心もない。空気も読めない。美意識があるわけでもない。集積したデータの中央値を結果として出してくるので、私の意図から外れた、つまらない動画になってしまう。音楽の真骨頂は感情を落とし込むこと。髪をかきあげたりするシーンなどでは表現したい動画を自分で試して動画を撮り、それを元にして、AIに動画を作らせた」と中野さん。
中野さんは今回の制作作業を振り返り、「私が好きな歌謡曲や、J-POPを令和の技術でどうやったら再構築できるか試してみた。面白いエキサイティングなゲームだった」と話す。「彼女がだんだんと狂気に染まっていくさまを細かなディテールまでこだわって作ったので、楽しんで見ていただけたら。次は実写で作ってみたい。AIというツールが出てきたことで、全ての人の手にキャンバスや絵の具が行き渡った。後は何をするかだと思う」とも。