工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に拠点を置く「ソーラーカープロジェクト」は7月24日、オーストラリア大陸約3000キロをソーラーカーで縦断する「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(WSC)」参戦に向け、新型ソーラーカー「OWL(アウル)」を発表した。
同プロジェクトは、これまでにもイベントやレースに数多く参加しており、2013年には、ソーラーカー「Practice(プラクティス) 驍勇」でWSCの「チャレンジャークラス」に初参戦。今回は国内大学として初めて、4輪で2人乗り以上という、より実用車に近いレギュレーションが設定されている部門「クルーザークラス」に参戦することになった。
「OWL」は全長=4.5メートル、幅=1.8メートル、高さ=1メートル。天蓋(てんがい)形のキャノピーではなく、フロントスクリーンを採用し、2席・2ドアを実現。ボディーは一体成型で製作することでコストや手間を抑えたほか、逆凹型とすることで、「Practice」よりもCdA(空気抵抗係数)を56.7%低減。空力性能を向上させるなど各所に工夫を凝らしている。
製作には大手企業も協力。タイヤメーカーのブリヂストン(中央区)は、ソーラーカーレース用にチューンアップしたタイヤ「ECOPIA(エコピア) with ologic」を供給するほか、ソーラーパネルの表面に貼り付けることで発電効率を上げるフィルムも提供。
太陽光発電システムなどを手掛けるサンパワー・ジャパン(港区)がソーラーパネルを、ベアリングメーカーとして知られるNTN(大阪市西区)が特別仕様の軸受けを、帝人グループが車体に使われる超軽量の炭素繊維「テナックス」を、それぞれ提供する。地元・八王子からも工業用接着剤の開発・製造などを手掛けるスリーボンド(八王子市狭間町)が接着剤などを提供し、チームをサポートする。
「今回のコンセプトはデザインド・バイ・工学院大学」とチームメンバーで機械工学専攻修士2年の大原さん。「ソーラーカーには30年の歴史があるが、形状が変わることはなかった。3号機を製作するにあたり、先代の改善点を洗い出し、敵チームを徹底的に分析した。その上でコンペティションを行い、勝ち抜いたものを製作した。車両製作には1年以上を費やした」と振り返る。「クルーザークラス」は今回のレギュレーション変更で、よりスピードが重視されるようになったことから、「勝てる車両を作るために空力性能に最も重点を置いて作った」とも。
「OWL」は英語でフクロウの意味。「フクロウは知恵の神・アテネを象徴するもの。チームの知恵がたくさん詰まった車両で、コンセプト段階では車の顔がフクロウの顔に似ていることから、この名前にした」。このほか、ナンバーを「88」にすることで八王子を想起させるなどの遊び心も忘れない。
「学生たちは、たかだか6年ほどだが世界のエンジニアと競争をしなければならない。それができるのがWSC。ビジョナリーチームとして、今まであったデザインでなく、デザインド・バイ・工学院大学として、世界にすごいと思ってもらえるマシンを作るというのが全メンバーの気持ち」とプロジェクトの代表を務める同大機械システム工学科の濱根洋人准教授。
「実用に近いクルーザークラスは当初からやりたいことだった。1年以上の泣き笑いがあって今日に至っているが、10月18日にダーウィンをスタートするまでにはまだまだやることがある。世界の学生に負けない、工学院大学のオンリーワン技術を今年は見せるんだと頑張っている」と意気込む。
WSCはオーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの約3000キロを走破する世界最大のソーラーカーレース。1987年の開始以降、現在は2年ごとに行われており、今年で12回目。「クルーザークラス」は前回の2013年より実施されており、今回は世界12カ国12チームが参戦予定。
今大会は10月18日~25日の日程で行われる予定。