明星大学経営学部の学生と日野市の和菓子店「紀の國屋」(日野市多摩平1)がコラボし作り上げた大福「まん福」の販売が1月28日、始まった。
日野市と岩手県紫波町が2017(平成29)年に姉妹都市盟約を締結してから、今年で5周年を迎えることを記念し、姉妹都市の関係をPRするご当地土産として生まれた今回の商品。
あんには日野市産のサツマイモと豆腐店「とうふ処 三河屋」(日野市三沢4)の豆乳から作ったスイートポテトを使用。紫波町産のもち米「ヒメノモチ」と国産のムラサキイモパウダーを練り込んだ生地を合わせ大福に仕上げた。
明星大学と紀の國屋は2018(平成30)年から共同で新商品の開発を進めている。今回は2020年春から学生55人が7つのチームを作り、それぞれが土産品を企画。同年11月には大坪冬彦日野市長らが参加して「姉妹都市お土産品審査会」が行われ、通過した提案を基に商品化を進めた。
販売開始翌日の1月29日には、開発に携わった学生が豊田駅前にブースを出店。直接「まん福」を販売した。10時から販売を始め、終了となる15時までの間に用意した約80個が売れた。取材中も道行く人がブースに立ち寄り商品を購入していく姿が見られた。
開発に携わった同大経営学部経営学科3年の佐藤はづきさんは「紫波町のことを全く知らなかったので、特産品や文化、伝統がどんなものかを調べ、そこから日野市の特産品と掛け合わせることができないか考えた」と話す。
昨年2月ごろから本格的な開発に入ったが、コロナ禍の中ということもあり、佐藤さんは「紀の國屋との話し合いも含めて、Zoomを使いオンライン上でコミュニケーションを取りながら進めた。試作品の色がイメージとは違うなどオンラインならではの行き違いもあり難しいところはあった」と振り返る。
元々の提案はおやきだったが、紀の國屋からのアドバイスで大福に変えたという。「このお菓子は添加物などは使っていない。子どもにも食べてほしいと思ってみんなで考えた。商品のアイデアを考えたのはコロナ禍の真っただ中で、おうち時間のストレスや女性の家事・育児の負担が増えたことがニュースで取り上げられていた頃だった。家事や育児、仕事に疲れている女性の方が一息つけるのは甘いものを食べている時だと思う。夜に食べても罪悪感なく食べられるように作ったので、主婦世代や若い女性の方にぜひ手に取ってもらいたい」と佐藤さん。
「まん福」という名前は「コンセプトの『罪悪感なく満足して食べられるもの』から、満足の『まん』と大福や縁起が良い『福』を掛け合わせた」とも。開発プロジェクトに携わった同大経営学部経営学科3年の高橋ひかるさんは「『まん』がひらがななのはかわいく、親しみやすそうだから」と説明する。
「1回も会わず、オンラインの話し合いだけでここまでできたのはなかなか貴重な体験だった」と高橋さん。佐藤さんは「イラストに描いたものが実際に商品になるとは思っていなかったので、本当に感動した。それをお客さんが買ってくれるところを見たら、頑張ってよかったと思った。商品企画という仕事に興味が出てきたので、今後の就職活動でもそのような分野を考えていきたい」と意気込む。「8人のグループだったが、いろいろなアイデアが出てきた。8人もいるとこんな良いものができるんだと思えた」とも。
今回のプロジェクトは2年生の選択科目「ビジネス実務応用『新商品開発』」の中で進めた。担当した同大の田原洋樹特任教授は「オンライン、なおかつグループでやるというのは初めての経験。われわれもどこまでうまくやれるか分からなかったが、結果的に素晴らしいプランが練り上がってきた。リーダーがしっかりしていたのもあるし、仲間でやり遂げようという意識があったんだろうと思う。リアルと遜色ないくらいの形でやれたのは彼女たちの力で感謝している。非常に優秀なチームに恵まれた」と話す。
「紀の國屋も学生のアイデアや形をそっくりそのまま尊重してくれた。デザインも学生が発案したままでやってくれた。生産者の力も詰まった商品になった」と田原さん。「今回はテーマが決まった中での取り組みだったが、世の中にはいろんな商品がある。こちらからテーマを探していき、ご当地商品やサービスを学生目線で開発していくことができる、クリエイティビティーを発揮できるようなことをやっていきたい」と意欲を見せる。
価格は5個入り1,000円。