工学院大学八王子キャンパス(八王子市中野町)に拠点を置く「ソーラーカープロジェクト」が10月23日、オーストラリア大陸縦断約3000キロをソーラーカーで走破する「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(WSC)」をクラストップでゴールするも優勝を逃す波乱の結果となった。
WSCはオーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの約3000キロを走破する世界最大のソーラーカーレース。1987年の開催以降、現在は2年ごとに行われており、今年で12回目となる。今大会は10月18日~25日の日程で行われていた。
同プロジェクトがWSCに参戦するのは2回目。今回はクラスを変え、4輪で2人乗り以上という、より実用車に近いレギュレーションが設定されている部門「クルーザークラス」に参戦。新型ソーラーカー「OWL(オウル)」で挑んだ。
予選の結果を受け、スタート地点であるオーストラリア北部の街・ダーウィンを22番手で出発した同プロジェクト。快調に走行を続け、大会初日から走行距離ではクラストップを獲得。レースの中間地点であるアリススプリングスを20時間48分30秒のタイムで通過し、前半戦である「ステージ1」を制した。
後半戦に当たる「ステージ2」でもクラストップを維持。ゴール直前のポートオーガスタに設けられている最後のコントロールストップでは、2位のオランダ「Eindhoven」チームとの間に13分もの差をつけた。最後までそのペースを保ち、レース開始から6日目にして、ゴール地点であるアデレードに到着した。
走行距離に加え、実用面や外部コンセントからの充電量、搭乗者を乗せた距離の合計など、その他の採点ポイントも踏まえて、25日に最終的な順位を発表。総合優勝は2位でゴールした「Eindhoven」チームとなり、同プロジェクトは残念ながら念願の優勝を果たすことはできなかった。
同プロジェクトは大会前よりスピードで得点を稼ぐことを明言。時速100キロほどで走っていたが、大会側から横風による車体の安定性不足を指摘され、「ステージ2」で最高速度を時速70キロに制限されたという。速度制限は映像などを利用した抗議が認められるまでの半日間にわたって課されため、ライバルチームに対して大きな得点差をつけることができず実用性などの面で逆転されたとみられる。
判定に携わっていなかった大会関係者からは「なぜ工学院大学に、オブザーバーからそのような指示があったのか理解に苦しむ。スピードが大部分のポイントを占める本競技で、最終的に誰の判断でそのような指示が出たのか不明確」とした上で、「速度制限についてはゴール後、即座に文書で抗議すべきだった」と後味の悪い結果となったことに理解を示した。
「ドライバーはレーシングレーサーとして体力と集中力を発揮。メカニックとキャンプクルーは高速走行のサポートを万全にした。ステージ1、ステージ2ともに工学院大はトップでゴール。工学院大は本来のレース・レーシングでやれることは全てやった」とプロジェクトの代表を務める同大機械システム工学科の濱根洋人准教授。「今回の大会からスピード得点比率が上がったものの、実際はレース・レーシングではない運営であったことが残念。しかし、工学院大はレース・レーシングを完遂できたことに大満足をしている。予定していた全てを出し切った」と大会を終えた感想を述べた。