八王子の料亭「なか安」(八王子市暁町1、TEL 042-623-2222)を舞台に現在、「明日も楽しみでたまんない ~学生シェアハウスdesign project(デザインプロジェクト)~」が進んでいる。
同店と不動産業を営む住宅工営(旭町)、日本工学院八王子専門学校(片倉町)の3者がタッグを組む同プロジェクト。地域活性化を目的に同校建築学科3年の学生56人が前期授業の一環として進めている。
「なか安」は、1933(昭和8)年に創業。八王子駅からひよどり山方面に車で約8分の浅川近くに位置する。今回は、2003(平成15)年までホテルとして営業し現在は空きテナントとなっている同店ビルの高層階を、学生が「自分も住みたくなる人気のシェアハウス」をテーマにリブランディングする。
住宅工営の齋藤祥文社長は「なか安さんは宿泊をやめてから、5階から上がほとんど有効活用されていなかった。3年くらい前から有効活用したいと相談を受け、いろいろな提案をさせていただいていた。新しい価値を生み出し、人の流れを作っていかないといけない中、日本工学院八王子専門学校の方に相談をさせていただき、学生にアイデアを出してもらうのはどうかということになった」と話す。
学生には立地場所や周辺環境なども含め、生活する住人のライフスタイルを提案するよう求めるという。「なんとなく箱を造って終わりではなく、完成した後にそこに住む人たちの暮らしまでを提案してもらうプロジェクトになっている。新しいコミュニティーを作り、人が自然と集まるようになれば、その場の不動産価値は上がっていく。新しい人の流れを作るのが一番やりたいこと。なか安さんという建物を外に開いていき、なか安さんを中心に暁町を活性化させたい。建物がおしゃれとか内装の設備が高級といった価値ではなく、自分自身の価値を高められるような場所を作っていけたらいい」と齋藤さん。「3年後には別世界にしたい」と意気込む。
今春以降、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、オンライン授業や現地見学会の開催などを通して、学生は課題に取り組んできたという。7月中旬からは中間発表、9月には最終発表会を開催。その後、実際に学生の提案を元にシェアハウスとして改修し、住宅工営が運営・管理する形で、来年以降、学生に実際に住んでもらう方針。「イメージとしては、先輩が後輩のためにシェアハウスを作るような形」とも。
中間発表を前に、「学生にはリアルなビジネスの話として本気で取り組んでほしいと言っている。置きにいってもらいたくない。人が思いつかないような斬新なアイデアこそに価値があると思う。固定概念にとらわれることなく自由な良いアイデアを出してほしい」と齋藤さん。「学生も本気になってくれているので、中間発表では本気で向き合って良いものを作りたい。そうやっていかないと良いものは作れない。授業としては今夏で終了することになるが、来年度は第2弾をやりたい」とも。